考える練習

舞台やイベントの感想など

微妙だった話をしようか

何の話かというと、舞台「鋼の錬金術師」の話です。

最初、タイトルを「舞台ハガレンの至極正直な感想」にしてたんですが、この記事では微妙だったところのみ書く予定なので、そうすると、すべて微妙だったみたいになってしまうことに気づいてタイトル変えました(笑)


これまでいろいろ2.5を見てきて、単純に原作エピソードをなぞるだけではだめで、舞台作品として再構成しないとダメなんだな〜と思ってたんですが、今作はその罠に見事に嵌ってしまった作品だなと思います。

確かに再現度はめちゃめちゃ高いんですよ。(一部なんでそうなった?という人もいますが) だいたいは原作のあのキャラだ!って感じの役作りで、ちゃんとしてるし、ハガレンをやるにあたって、ここは必要でしょってエピソードは拾っているし、演出もマッピングを駆使しつつ、おおむねうまくやっているように思います。

なのでこう、微妙な2.5あるあるの「なんでそうなるんだよ!原作読んだか!?」という怒りはないんですが、なんというか、シンプルに"つまらなかった"んですよね。セリフの流れがおかしい箇所やいろいろダサい箇所もあるにはあるものの、良いシーンはめっちゃ良いだけに不思議な感じもするんですが、観劇1回目と2回目は(なんか"つまんない"んだよな…なんなんだろうこれ…)と思いつつ見てました。3,4回目でちょっと楽しくなってきて、5,6回目はわりと楽しかったです。(その後はまた飽きてつらくなるターンが来てたけど…) たぶんダメポイントは適当にスルーしつつ、自分の脳内でいい感じに編集しながら見られるようになったのかなと思っています。


各キャストの演技はとてもよかったので、正直な話、賞賛したいんですよ。「舞台ハガレンめちゃめちゃよかった!最高!」って言いたい。けど作品としては微妙だった作品をまるでそうではなかったように書くのは私のポリシーに反するんですよね。自分でもめんどくさいな~と思いますが(笑)。書いてて気づきましたが、一番のもやもやはたぶんここなんですよね。推しの演技がとてもよかったから全力で褒めたいのに、作品としては微妙なためにそれができない。

舞台は総合芸術とはよく言われますが、今回みたいなケースを見ると本当にそうだなと思います。演技は悪くないし、ところどころおかしいところもあるものの、大事なシーンはおおむね脚本も演出もおかしくない。原作の再現度も高い。でもトータルとしては微妙。

私が推しの演技がよければオールオッケー派だったら今回の舞台、もうめちゃめちゃ絶賛してると思います。…というか絶賛してる人たちってそうなのかもしれないな…。そう考えるとスタオベもそこへの賞賛では??という気がしてきた。スタオベするレベルじゃないと思ってるのに立ってるの(前の人たちが立つと推しが見えなくなるので立つ)、スタオベに推しが喜んでるだけに推しを騙してるみたいで心苦しかったんですけど、よかったとこへの賞賛だったということにしておこう。

よかったところはまた別記事で書こうかな。Wキャストだったのもあって、いろいろ推しの演技についても見えてきた部分があっておもしろかったんですよね。


微妙ポイントは大きく分けると下記かなと思っています。

1. 構成:原作のエピソードをただ並べてはダメ

なんか微妙…となってしまう一番の原因がたぶんこれ。冒頭でも書きましたが、2.5って単純に原作エピソードをなぞるだけではダメで、舞台作品として再構成しないといけないんですよね。

最初の印象として、1本の舞台作品としての話の流れ(ここで盛り上がりをつくって、いったん落ち着いてからのここでクライマックス…みたいなの)がそもそも考慮されていない印象を受けたんですが、原作漫画を読み返しつつ、構成を振り返っていたら、今作の構成、あれ以上どうしようもなかったのかもなって気もして来ました…(笑)。2.5慣れしてる脚本家さんならまた違った回答を出したかもなぁ…とは思うんですが、不慣れな人がやった場合の構成としてはあれが最善かもしれない。

次の項目で書くのですが、原作から切り貼りした結果、セリフの流れがおかしい箇所が散見されるので、そういう組み換えが苦手な方なのかなと思ったんですが、原作と比べるとなかなかうまく再構成している箇所もあるんですよね。なので、全体に下手というよりは、気にすべき箇所が多すぎるために全体に目が行き届かず、うまくいっていない箇所が残ってしまった、ということなのかなと思っています。

2. 脚本や演出が微妙なシーンがある

いくつかパターンがあるんですが、ざっくり場合分けすると下記のような感じ。
①原作から切り貼りした結果、セリフの流れがおかしなことになっている
②原作でA→B→Cという流れでセリフがあるところをBのみ抜き出した結果、意味がわからないことはないのだが、意味合いがかなり変わった言動になってしまっている
③今どういう状況なのかよくわからないシーンがある
④(編集の結果挿入されたオリジナルの)セリフがダサい
⑤露骨な説明セリフ
⑥出捌けの動機が謎なのでいかにも段取りっぽいシーンがある
⑦演出が微妙
 7-1 制約の結果そうなったんだろうなとは思うけど、もうちょっとなんとかならんかったか
 7-2 その状況でこうしたかったならその行動にはならなくない?

分類してみたら思ったより多かった(笑)。
1回目見た時に「無限にひっかかりポイントが出てくるんだが??大丈夫かこの作品」とめちゃめちゃ不安に駆られたポイント。今手元で書いてるやつで数えると20はいかないかなという感じなので案外数ないなとは思うんですが、たぶん普段見てる作品だと、あって2,3箇所だから5個超えた時点で「多い」印象になるんだろうな。

しかも序盤でもう5か所ぐらい「え??」っていう箇所が出てくるんですよね…(笑) 作品の最初の印象を形作るところはもうちょっと丁寧に作って欲しかった。。作品の入り口でそれをやられてしまったので、余計におかしい箇所が気になってしまったのもあるのかなと思います。
おかしいポイントの詳細については、全部書き出したらわりと長文になってしまうのと、さすがにかわいそうか…?という迷いがあるので、どうしようか考え中。とりあえず公演アンケートには入れとこうと思ってます(次回直せるなら直してほしいので)。

「普段気にならないということは、他の舞台ではこういうとこもちゃんとしてるんだな」と気づけたという点では興味深い点でもあるんですよね。ちょうど直後にヒプステのシネマエディットを見に行ったんですが、「そうそう、こういう時は普通そうやって処理するよね!」みたいな再確認ができておもしろかった。

3. やたら暗転する

漫画原作あるあるで、ハガレンも場所があっちこっち行くので、場面転換が頻繁に発生するのは仕方ないんですが、暗転が多い。半分くらいは暗転で変えてるんじゃないかな…しかも完全暗転の頻度が高い。んでまたそこそこ時間がかかるんですよね。まぁ完全暗転するということは何かを動かすということなんで、必然ではあるんですが、まっくら、つまり何も見るもののない状態でしばらく待つ、というのが度々出てくるのは地味にきつい。


ここまで書いといてアレなんですが、上記の問題点を解決したところで、本作の「つまらなさ」って実は解消されない可能性が高いなとも思っています。

とあるゲーム原作の舞台で、第1弾の時に原作のゲームの展開を丁寧になぞりすぎて、舞台としてはテンポが悪い感じになってたので、あれが直ればなぁと思ってたんですが、第2弾で丁寧になぞりすぎ問題が改善されていたにも関わらず、「なんかつまんない」感じが変わってなかったんですよね。あれが原因ではなかったのか!とわりと驚いたのを覚えています。

今回もその時と感触が似てるんですよね。話は面白い、と思う…んだけど、見ていてとにかく「つまらない」。役者の芝居が微妙なわけでもない。たぶん「何か」が違うんだろうけど、その「何か」がわからない。


あと、この作品を見たのが5年前なら私も素直に感動したんじゃないかな~という気もしています。たまーに2.5見に行く原作ファンの友人の感想とか、今回初めて2.5見た人の感想とかを見聞きしてて気づいたんですが、もう、アルの動きすごいね!とかプロジェクションマッピングすごいね!とかだけでは感動できなくなってるんですよね。その上、なまじ観劇慣れしてきていて余裕があるだけに、セリフの流れがおかしいことにも気づいてしまう。

舞台ならではのプラスアルファが乗らないと面白いと思えないんだな〜と。もともと原作が好きで、舞台版を見て舞台ならではの面白さにまた新しく感動できた作品がいくつかあるんですが、あれは奇跡みたいなものだったんだなとしみじみ感じました。