考える練習

舞台やイベントの感想など

近況 & 配信のオススメ

みなさま、いかがお過ごしでしょうか? 私は元気です(?)

GWのすべての観劇予定が吹っ飛び、「これは例年になく暇なGWになるな…」と思っていたんですが、毎日刀ミュの無料配信見て、合間に断捨離したり他の配信見たり漫画読んだりしていたら、あっというまにGWが終了していました。

最後に観劇したのが3/21。4月上旬あたりは観劇できないフラストレーションがたまってなかなかつらかったんですが、そこからさらにひと月たって、「劇場に行かない」ことに身体が慣れてきたような気がしています。


最初は配信って集中しづらいな~と思ってたんですが、ちょっとコツをつかんできた感触があって、個人的に一番のコツは「劇場での観劇時と同じレベルの集中力を(自分に)期待しない」ことかなと思ってます。矛盾してるようですが(笑)。例えば友人との円盤鑑賞会とかが想像しやすいかなと思うんですが、そういう時って劇場で見る時みたいに120%の集中力で見ないじゃないですか。80%ぐらいの集中で、感想言い合ったりヤジ飛ばしたり(?)しながら見ますよね。ああいう感じ。

各所の無料配信とか見始めた最初の頃は「劇場での観劇時と同じように集中できていない自分」が気になって余計集中そがれてる部分があったんですが、80%ぐらい集中できてたらOKかなというゆるい感じで見るようにしてから、かえって前より集中しやすくなったように思います。

それから、「軽く中断はしても、完全中断はしない」。配信を見ていて集中がとぎれてきたと思ったらいったん完全に中断して、別のことを30分とか一時間とかしてから再開したりしてたんですが、これやると再開の時にけっこうエネルギーを要するのがわかってきたのでやめました。ゆるい気持ちでとはいっても、やっぱり「芝居に集中するモード」に入るには多少エネルギーがいるんですよね。ただ、携帯が気になって触ってしまった時なんかは、一時中断して、数分程度、気が済むまで触ってから戻るようにしています。


今のところ一番おもしろかったのが「12人の優しい日本人を読む会」。
5/6に生配信してたものなんですが、5月中(暫定)はアーカイブ残してくれるそうなので、よければぜひ。
前編 https://www.youtube.com/watch?v=3e2aKThmhXM (1:28:05)
後編 https://www.youtube.com/watch?v=ZDagy7MmFhY (58:33)
以前舞台作品として上演した「12人の優しい日本人」の台本を俳優陣がリモートで読む、という企画。朗読劇みたいな感じかな~舞台の評判よかったっぽいから見てみるかと気楽な気持ちで見始めたら、誰も台本読んでないし、気迫のこもった演技でもはや普通に舞台見てるのと変わらなかった。陪審員裁判のために集められた12人が有罪か無罪かを話し合うんですが、どんでん返しにつぐどんでん返しで、話がどう落ち着くのかまったく予想できなくて、めちゃくちゃおもしろかったです。


それから、人は選ぶと思うんですが、ぼろぼろ泣いたのが劇団チョコレートケーキさんの「追憶のアリラン」。
こちらは5/10まで(もはや今日!w)
https://www.youtube.com/watch?v=7EVys-1MNCA (2:19:38)

第二次世界大戦末期、大日本帝国の統治下にあった朝鮮に駐在していた日本人公務員の視点を中心に描いた物語。主人公は朝鮮人も日本人と同等に扱うべきだという思想で、時には憲兵隊隊長に意見したりもするんですが、朝鮮人たちからしたら同じく「日本人」として見られるのだ、ということがあざやかに描かれていました。戦争が終わり、今度は日本人が罪人として裁かれる側になると、朝鮮人のために尽力してきた部分もあるのにあくまで「日本人」として扱われてしまうつらさ、これまで受けてきた仕打ちから、いい人もいるのがわかっていても日本を憎まざるを得ない朝鮮人たちの事情。

個々人での状況においては誰も悪くない、でもどうしようもない、というのに私はとても弱いので、もうめためたに泣きました。そしてその状況でも自分の信念を貫こうとする人たちの姿が一筋の希望のようで、そういうのにも弱いので、ぼろぼろに泣いてしまった。

ちなみに、尋問するシーンはありますが、ボコボコに拷問するようなシーンはないので、戦争ものとしては見やすいと思います。

現実とフィクションのあわい - 「要、不急、無意味(フィクション)」感想

劇団た組さんのインターネット公演「要、不急、無意味(フィクション)」の4/19(日) 13時公演を見た。

Skypeを利用したリアルタイム上演(?配信?)と聞いて、どういう感じなのかなという好奇心から観劇(?)した。作り手の意図とはズレたところでおもしろがっている気がしてならないが、めちゃめちゃおもしろかった、という話。

話の内容については、詳細に書いてくださってる方がいらしたので、そちらを見ていただいた方がいいかと思う。
maguromgmg.hatenablog.com




今回の公演はSkypeのグループ通話を利用した方法だったため、メールで送られてきたリンクで「通話に参加」するところから始まった。Skypeアプリの真っ暗な画面の上方に静かに参加者のアイコン(大半は画像設定なしでアルファベット数文字が表示されているだけ)が粛々と増えていくのは不思議な光景だった。マイクとビデオをオフにした参加者が静かに増えていく。

上演5分前に開演前の諸注意。飲食禁止や私語禁止のアナウンスがないかわりに、マイクとビデオはオフにしておいてくださいという内容。録画や録音禁止のアナウンスも。Skypeスクリーンショットを撮るとチャットと連携していてバレるというのは初めて知った。

Skypeを使うのが久しぶりだったので、ちゃんと見れるのかが若干心配だったのだが、上演開始前にテストとして、いったん俳優さんたちの映像を映す時間があって安心した。4分割の画面に映し出される俳優さんたちのお顔。

スマホ版のSkypeでは、俳優さんたちのアイコンを自分で画面中央に持ってこないと映像が映らないらしいのだが、そのアイコンが見当たらないというコメントがチャットに書き込まれ、「マイクに反応するので、喋ってもらえますか?」ということに。「○○です」と各々名乗る俳優陣。

私はここで初めて、彼らも「今まさに」画面の向こう側にいることを実感したように思う。リアルタイム配信であることは「知って」はいても、それまではなんだかんだで映像として見ていた気がする。

余談だが、「健介さんだけ見えないです…」というコメントが書き込まれ「健介、見えないってよww」と俳優さんたちが笑うという一幕があり、くつろいだ、素っぽい様子を見ていると、本当にSkype通話の覗き見をしているようで、妙な親密さを感じてどきどきした。

不具合報告のチャットが落ち着いたところで、いったん俳優さんたちのビデオをオフ。そこからあらためて上演開始となった。

お芝居の内容は、Skype通話で友人4人がぐだぐだとしゃべっているところを見る、というもの。現状と同じようにコロナウイルスのために外出が自粛されているために彼らはオンライン飲み会をしようということになったらしい。繰り出される不満や愚痴はまさに私達が喋り、見聞きしている内容そっくり。

ただここでちょっと惜しかったなと思うのが(というと上からになってしまうが)、救済策として30万出るけど、あれだいたいの人もらえないよね、という話をしていて、あ、「今」ではないなというのがわかってしまったこと。まぁでもいつ政策が変わるかなんてわからない以上、そこまで厳密に取り込めというのがそもそも無茶ではある。


開始から5分くらいたった時だろうか。途中から参加した人が操作がわからなかったらしく、マイクとビデオをONにした状態で参加してしまった。しかも間の悪いことに、その段階では4人の内の一人がまだSkype通話に参加していないという設定で、画面が4分の3しか埋まっていなかったので、空いたスペースに突然の闖入者が映し出されることになってしまった。

いや邪魔だな~早くビデオをオフにしてくれ…と思いながら3人の芝居を聞いていたら、「なんか映ってない?」「え?ほんとだ。なんだろ?」と俳優たちが触れ始めたのは驚いた。しかし、彼らがこのSkype画面を見ながら喋っているのだと考えれば、突然の謎の映像に触れない方が不自然である。そのあたりでようやく闖入者の映像がオフになり、3人は元々の話題に戻った。

これはまさしくハプニングであり、明らかに公演としては予期してはいないことだが、この時にあらためて「今まさに彼らも画面の向こうにいること」を強く感じて、私はまた映像として見ていたんだなと思った。

詳細は省くが、会話の流れからAVの音声を聞く流れになり、しかもそのAVを止められなくなったために、喘ぎ声をBGMに会話を聞く状態になる。「シュールだな~」と思いながら聞いているうちに、もう切ろうという流れになり、4人がそれぞれ切っていく。(余談:確かこの時に、最後に一人が名残惜しそうにしばらくつながった状態になっていたのがなんだか印象的だった)

唐突な幕切れだったなぁ…と思いながら、真っ暗な画面を眺めること数秒。

「一年後」という文字と音声。

えっ、嘘でしょ!?

リアルタイム配信であること、「今この時」を共有していることに意味がある公演だとここまでの流れで勝手に思っていた私はかなり驚いた*1。先程までは、私と彼らとで「今この時」を共有していた。同じ時を生きていた。しかし、彼らは一年後の時空に進んでしまった。先程から地続きで存在する私と、映像の中の一年後の彼らがうまく処理できなくて、脳が戸惑ったのを覚えている。


私はそこからあらためて、「フィクションの作品」として見始めた。画面の中の彼らは「一年後の彼ら」。その認識を脳になんとか浸透させた。この時の現実から切り離されるような感覚は味わったことがないものだった。

この後さらにもう一度、一年時間が進んで最初のシーンから二年後にも飛ぶのだが、個人的には一年後は悲観的すぎる予測だし、そこを基準に考えるなら二年後は楽観的すぎるなという印象だった。

そのあたりの、私の想定する未来像からの遠さが原因なのか、一年後に飛んだ時の現実感からの切り離しの印象が強すぎたのかはわからないが、一年後二年後の部分に関して、あまり今の延長線上にありうる未来だという感じが私はしなかった。あくまでフィクション、ファンタジーという感じ。


最後の幕切れもぬるっとした終わり方だった。
真っ暗な画面に表示され、読み上げられる、
「この物語は、フィクションでした」

そう、フィクションなんだよなぁ。リアルタイムでSkype通話でつながって彼らの姿を見ていたけれど、これはあくまで「フィクション」なのだ。


この公演は、何をもって私はリアルタイムだと感じ、現実だと感じるのか、その境界が揺さぶられるような体験だった。

双方向なやりとりが発生した瞬間の「彼らも今まさに向こうにいるんだ」という気づきと、彼らが一年後にスキップした時の「置いていかれた」感じ。いずれも新鮮な感触で、とてもおもしろかった。

*1:しかし、そもそも暗転=場面転換なので、そこで気づけよという話ではある

浪漫活劇譚 艶漢 第四夜 感想

今回最後の週しか取っていなくて、自粛要請が出てばたばた公演中止が出ていたので、どうなるかはらはらしたんですが、やってくれてよかった…。ありがとうクリエ。ちなみに観劇時はマスク着用推奨で、マスクしてないお客さんには声をかけて着用をお願いする徹底ぶりでした。


水劇の話は舞台化難しいだろうなと思っていたので、水劇のくだりをやるらしいと聞いて「まじか」となったんですが、照明、音響、そして役者さんの動きにより、ちゃんと水劇でした。弁士っぽい感じで芝居の説明してるの見て、そうか演者は水の中だから喋れないんだ!とあらためて実感したり。

お互いにないものねだりしていたことがわかる、というわかってみれば卑小なんだけど、その人間の小ささがいじらしく思える感じがして、このエピソードはなんとなくほっこりします。どろどろではあるけども。

その分、漁火のゲスさがきわだつ感じで、これまで尚哉くんの悪役見たことなかったんですが、いい感じにセコい悪役って感じでよかった。

詩郎は公演を経るごとに色気が増してる感じで、今回もよかった…。しかも光路郎に対しての信頼が育ってきている分、甘えが出てきていてそれがめちゃくちゃかわいい。「あてしだって!」って張り合うところとか、その甘えを感じて悶えました。あとラストあたりかな、「大馬鹿」って言うところで、光路郎と抱き合ってて光路郎には見えないからなのか、めちゃめちゃ嬉しそうな顔してるのがさ~~~!ずるい、その表情はずるい。

あと安里は今回も安里でした(感想)。登場しただけでぱぁっと雰囲気が華やかになり、目が惹きつけられる感じはすごいな~と毎度新鮮に驚きます。

さらりさらり、ぱったり - 能楽男師2「鴈礫・附子」感想(ネタバレなし)

舞台自体は二週間ぶりでそこまで久しぶりでもなかったんですが、荒牧さんを生で見るのがけっこう久しぶりだったので、五臓六腑に染み渡るような心持ちでしたね…。中止になるかどうかドキドキしましたがやってくれてありがたかった。

入場時にアルコール消毒&体温測定。会場内での物販はやめて通販のみ、キャスト宛の手紙やプレゼントの預かりもなし、という徹底ぶり。お客さん側もたぶん全員マスク着用、お手洗いでもみんな石鹸使って洗ったりアルコール消毒してたりで、ここから感染者を出さないという気迫を感じました。

生配信のタイムシフトが(たぶん日曜まで?)見られるので、ネタバレ配慮感想にしてみようと思います~。
※追記:販売期間3/21(土)16:30までだったようです。期限すぎてから見に行ってくださった方いたらすみません。
能楽男師 鴈礫・附子 (昼の部) - ニコニコ生放送
能楽男師 鴈礫・附子 (夜の部) - ニコニコ生放送
各4,000円(税込み)。
夜の部の方がキャストの緊張が取れててのびのびしてる感じだったので、どちらか買うなら、夜がオススメ。

会場について

会場は宝生能楽堂。舞台の構造と座席配置が面白い。下記リンクに座席表があるんですが、劇場の舞台に慣れてると衝撃の配置です。
チケットのご購入 | 公益社団法人 宝生会
正面の座席少なくない…??という…(笑) 脇正面と中正面がサイドシートだとすると約半分がサイドシートですよ。検索してみた感じ、他の能楽堂も同じ感じの配置だったので能舞台はこういうものっぽい。

これだけ脇正面の範囲が広いとなると脇からでも普通に楽しめるように作ってるのかな~と思ってたんですが、昼と夜で脇正面の後方列と正面中程の列から見た印象を比べると、やっぱり基本的には正面から見ることを想定して作られてるように思います。脇からだとところどころ表情見えないところがあるけど、正面からだとなかった気がする。

あと、舞台の四隅に屋根を支えるための柱があるんですが、これ中正面だと左手前の柱がけっこう邪魔だと思う。なので、もし選べるなら正面の座席選んだ方がいいですね。

それと、お手洗いの個室の数が20近くあって、めちゃめちゃ回転早かったのよかったです。

感想

まず衣装がかわいい!(ちなみに能楽では「装束(しょうぞく)」と言うらしい)


烏帽子かぶってるのが鴈礫(がんつぶて)での衣装で、身軽そうなのが附子(ぶす)の方の衣装です。色味がポップで目に楽しい。この衣装で出てきた時点で、「か、かわいい…」ってなってました。


最初、見て理解できるかが不安だったんですが、ふっつーに面白かったです。こんな楽しいとは思わなかった。わからない単語はちょこちょこ出てくるんですけど、話の筋がシンプルなのと、動作やセリフの言い方でだいたいわかる感じ。あと時間がそれほど長くないから集中力保つのもあるかも(鴈礫(がんつぶて)が約15分、附子(ぶす)が約25分)。

話の筋もちょろっと紹介しつつ…。

「鴈礫(がんつぶて)」

鴈(がん)は鳥の1種で、礫(つぶて)は石礫の礫。
ちょっと間抜けな大名(荒牧さん)が鳥でも狩るか〜と野遊山(≒ピクニック)に来たところに、鴈を発見。よし狩ろうかなというところに1人の男(健人くん)が通りすがる…というところから始まるお話。

健人くんが登場してからのスピード展開が楽しい。そもそも15分程度のお話なのでわりと何言ってもネタバレになってしまう…(笑) 大名がなんとも間が抜けてる一方で妙に賢しいところがあったりするのがより滑稽でおかしかった。

「附子(ぶす)」

附子というのはトリカブトのこと。
兄弟子と弟弟子が主人に留守を預かるよう命じられ、その際にこの箱には附子(トリカブト)が入っていて猛毒だからこれだけは開けてはならんぞと申し付けられたのですが、2人はそれが気になって気になって…というお話。

健人くんが兄弟子で荒牧さんが弟弟子。2人で一緒に何かする場面が多くてかわいかった〜。めちゃくちゃ子供っぽい感じでお互いに罪をなすり付けあったりしてたのがまたかわいかった(笑)

太陽の子が意味するもの - 舞台「DECADANCE」2回目 感想

1/29(水)ソワレを観劇。
1回目観劇後の感想はこちら。
舞台「DECADANCE」~太陽の子~ 感想 ※後半ネタバレ - 考える練習

解釈変わったとことか思いついたところを。
ネタバレ気にしてないので注意。

今回の座席はC列センブロ。思ってたよりはかぶらないなという印象。役者が立ってる分には問題なく見えますね。ただ、立ち位置によってはしゃがんだり座ったりすると前の人の頭がきれいにかぶってまったく見えない。

双眼鏡があればどこでも良席というスタンスなのですが、近いとやっぱり迫力があるというか、熱量を浴びる感じがありますね。ど真ん中で見得を切るシーンは意外と少なかったんだけど、オープニングでテイラーが「俺たちは太陽の中心だ!」って笑顔で言うところ、妙にどきどきしました。

それと、アクションの時の表情とか避け具合とかがよく見えるのが楽しかったな。西田さんの殺陣って基本的に間合いゆったりめに取って、その分勢いよく振るっていう感じだと思ってて、実際、大半はそうだと思うんだけど、誠治郎さんの振り回す剣が思ったより相手の顔の近いとこ通ってて「ひぇっ」ってなった。間合いがわかってるからこそできることだよな…。

太陽の子

前回の記事で、テイラーは何もしてないって書いてて、今回、やっぱ何もしてないよねって再確認してきたんですが(笑)、太陽は中心にいて動かない存在で、周囲の惑星が太陽の周りを回ることを考えると、テイラーは何もしないのが正しいのかなとぼんやり思ったりしました。

作品で太陽と月を対比させるのってよくやるけど、恒星としての関係性としては別に対比じゃないんだよな…と思ったり。ジェンバが「土の子」なのは地球のメタファーでもあるのかな。二人をつなぐ存在って考えるとそうだよね。

そういえば、ラストのオルタンシアの「そんなやついましたっけ?」っていうのが「土の子=>ツチノコ」を拾っていることに気づきました…w

あと、太陽の中心がよくわかんないな~と思ってたけど、これは作中でもちらっと言及されてるように「自分たちならなんでもできるという全能感」、世界の中心、的なことでいいのかな。

ラストの解釈

前回記事には全員生き延びる方向になるんじゃないか?と書いたんですが、いや違うな、と。たぶんマリウスは死んでしまうんだろうけど、彼にとってはやりたいことをやれた状態だし、テイラーとジェンバにとっては、旧友のやりたいことをサポートできたし、見届けられたということになる。ので、彼らにとってはハッピーエンドだったのかなぁと。

なぜ最後をぼかしてしまうんだ…と思ってたんですが、あのシーンで話を閉じることで、彼らにとって、これは肯定できる結末であることを強調できるからかなと。

この作品単体の話からちょっと逸れるのですが、西田さんのオリジナル舞台ってそういう、どんな悲劇的な結末に至ろうと、精一杯生きたなら、それを全力で肯定するという姿勢があることが多い気がしていて、その姿勢が好きだなと思います。

けど、やっぱ最後どうなったか描写か説明が欲しかったな~~~~(笑)

舞台「DECADANCE」~太陽の子~ 感想 ※後半ネタバレ

1/25(土)ソワレを見てまいりました。
disgoonie.jp

ディスグーニー作品、私はわりといつもそうなんですが、わかるようでわからん(笑) (あ、PANDORA と PSY・Sは見てないです) 話がとっちらかってる感じがすごい。

メインの話は判るんですけど、細かいところであれこれどういうことなんだっていうのがちょこちょこ発生する感じです。でもエモいし、うるっと来るし、なんなんだろうな……不思議な作品。

「野球」や「四谷怪談」の緻密に組み立てられた脚本とか、2.5作品での絶妙なバランスでのシーンやセリフの省略などを考えるに、わかりにくさはわざとなんだろうな〜と思うんですけど、もうちょっとわかりやすくしてもよくない!?(笑) ただ、余白が多い分、いろいろ考える余地があって、他の方の感想読んでると思いつかなかった着眼点からの発想があったりして面白い。

メインの登場人物たちがなぜそういう行動を取るのかがわかるのがかなり後の方なので、それまではとにかく出てくる情報を溜め込んでく感じで頭の負荷がすごかった…。わかりだしてからは面白かったけども。

塩野くん演じるテイラーと、長妻くん演じるマリウスがメインなんだろうなと事前情報で思ってて、実際話としては彼ら2人が主軸だったんですが、猪野くん演じるジェンバがなかなかいい役どころでわりと登場時間も長めだったのが、嬉しい誤算でした。

そもそもすべての登場人物がそれなりに尺ある感じなんですよね。「西田さんはキャラを愛しすぎるからシーンを削れない」みたいな話がTwitter配信で出てましたが、なるほとな〜という感じ。

猪野くんに関しては思った以上にいろんな表情見れたな〜というのと、めちゃめちゃ器用だなこの人というのを感じました。「今、そこ」に必要な芝居ができるというか。それでいてちゃんとこちらの情感を揺さぶってくるのがすごい。

今回見てて、やっぱり2.5じゃない作品の方が、その人の演技を十全に味わえる感じがするな~と思いました。2.5は2.5で好きなんですけどね。猪野くんはあんまりキャラに寄せない方だとは思うんですが、それでも2.5だとキャラのフィルターがかかるんだろうな。あと、猪野くんが「西田さんの舞台が好きでよく見に行ってた」ことを聞いた時は意外だなと思ったんだけど、見てて好きな理由がわかったような気がしました。なんとなく。



以下、致命的なネタバレも含みます。雑感。






  • オルタンシアちゃんがいろいろ謎だったが、「天使では?」という感想見かけてなるほど!となった。少なくとも人ではないよな、「200年たった」ということは。神父さんもそうだとすると「祈る」ことの意味が急にでかい。
  • ジェンバもわりと謎なんですよね…大枠の行動原理はわかるんだけど、どこまで知っててやってたのか?とか細かいとこが…。
  • 最後、3人は結局どうなったんだろう…。「アンナがマリウスを倒す」ことで魔女伝説の完全否定になるのかな~と思うんだけど、彼らがアンナにそれをやらせるだろうか?というのと、そもそもマリウスを死なせないようにしそうな気がするので、死んだように見せかけて逃がす、とかありえそうだな~と思っている。
  • 記録の書き手が「ジェンバ・シェリーニ」ということは少なくともジェンバは生き残ったと考えていいのかな。猪野くんが薄ミュで演じた永倉新八も生き残って記録残した人だから、エモさを感じた。
  • マリウスがいろいろやってたのはつまるところ姉のためだったのはわかったんだけど、そこまでする理由として「許されざる恋をしていたから」っていう解釈を見かけて、確かにそう考えるといろいろ辻褄合うな!?となった。道理で姉の旦那にあたりが強い…。姉への愛情がでかすぎないか?と思っていた。次回そのあたりも注目したい。
  • テイラーが超ツボだった…。ああいうやさぐれ方してる人好き。予言や解説はするけど具体的な行動は特に何もしてない感じが「学者」っぽいなと思う。
  • マリウスがカヤルと「お疲れ様でした」みたいな会話しあうとこめっちゃよかった。
  • アンナが「魔女」なのでは?というのはぼんやり思ってたけど、彼らが見つけたものがアンナだったというのが判明するあたりはすごく胸にきました。
  • ジェンバが牢屋の鍵を渡された後、ぶわっと涙ぐむところ、さっきまで普通に喋ってただけに、鮮やかな変化にぐっときた。
  • アンナとの対面シーンのお兄ちゃんっぷりがよい。
  • あとあの緑のやつ…(笑) ああいうのって俳優側としてはどうなんだろう。「俺だって好きでこんなことしてるわけじゃない」のしょぼくれ具合が好き。

舞台「血界戦線」感想

当ブログではおなじみの時空の歪みが発生していますが気にしないでください。
昨年11月の舞台の感想です。

どうせ書くならちゃんと書きたいな~というのがあって、書いちゃ消し書いちゃ消ししていたのですが、寅太さんのブログを読んで、そうだよな!書きたいように書こう!ということで諦め吹っ切れました。半分は猪野くんのザップがかわいかった話をしています(長くなったのでこの項は最後)。
torata-nu.hatenablog.com


たーのしかった!
ひさしぶりに短い期間でいっぱい入った感じで、舞台行けない平日も原作の漫画読んだりアニメ見たりしてたので、血界戦線にひたった三週間でした。

配信も終わってしまったので、ネタバレは気にせず行きます。

全体についての感想

原作はアニメ5話まで視聴した状態で観劇。舞台化が決まったあたりで、連日ちょこちょこ見て、めっちゃおもろいやん…!ってなってたんですけど、そこから日が空いたら忘れるというあるあるをやってしまい、、気がついたら初日が目前だったので残りは諦めました。(結局平日に、シーズン1の残りを見て、漫画10巻読んだんだけども…)

1幕は各キャラの性格や必殺技が見られるエピソードを盛り込んで、展開早め。2幕は主人公vsガミモヅの話をじっくりという構成でした。確か 1幕が1時間半で2幕が45分。原作をまったく知らない状態だとちょっと厳しいかもしれないというスピード感ではありましたが、エピソードの取捨選択とまとめ方がうまくて、外してはいけない部分は外さず、でも舞台作品としてもちゃんと成立している感じ。

全体にごちゃごちゃしつつもスタイリッシュという原作の世界観も表現されてる感じで、見せ方に関しても、原作のエッセンスを持ってきていたように思います。

オープニングの最後、ライブラのメンバーが客席に向かって歩いてきて、明るくなりきらずに暗転入るんですが、かっこよすぎてめちゃめちゃテンションあがったし、明るくなりきらないのがあまりにも解釈一致。

必殺技の名前を叫んでから攻撃決めるのもいちいちやってて、原作で二人同時のやつはちゃんと同時なんですよ(笑) こ、細かい…!ってなりました。

今回、短いスパンで舞台->原作->舞台という形で、違うメディアに触れたのもあって、舞台化が難しいシーンをどう処理しているか?というのがよくわかったのもおもしろかったです。

舞台は基本的には場所移動が得意ではないメディアである、というところから始まる演劇論を読んでいたのもあり、余計気になったんですが、原作読んでると、場面転換が頻繁なんですよね。「いろんな場所出てくるな???」となってから舞台見たら、そりゃこれだけセットも動くよね…となりました。

必殺技の表現や異能力の者たちをマッピングに極力頼らずにアナログで表現していたのも、演劇ならではという感じで楽しかった。神々の義眼を与えられる時の妖怪みたいなのも、仕組みがわかっちゃうとシンプルなんですけど、布の動かし方と照明の加減で、初日ほんとにサイズ感がわからなくて、無限にでかい感じがあり、リアルに怖かった。
好きな表現:

  • スターフェイズさんの凍らせるやつの表現が綺麗で好き。きらきらと舞う欠片
  • ツェッドさん自己紹介時のシャボン玉での表現が音もあわさってかわいい。
  • 崩壊して落ちてくる時の風船

キャストごと

ギルベルト・F・アルトシュタイン

西田舞台ではおなじみの萩野崇さん。登場時間、セリフは少ないながらもしっかり印象を残していくのがさすが。歌うような「デルドロ・ブローディ。あなたともあろう方が…」が好き。

ただ、アドリブが不思議で、落としたチキンを拾うザップに、「3秒ルールなら、アウトです」は面白かったんだけど、その次からなぜか「ザップさん、ファイトです」に。セリフだけ見るとおかしくないんですが、これ言う時って、ほぼチキン拾い終わったタイミングなんですよね(笑)。何に対しての励ましなんだ?という。猪野ザップが地味に毎回違う返ししてたのがマメだったw

ティーブン・A・スターフェイズ

スタイルがやばい!喋り方をかなり寄せててすごかった。
ティーブンさんといえば足技ですが、すらっと伸びる足で繰り出される蹴りがめちゃくちゃ綺麗。なんか蹴りが上品なんだよね。途中から足をいためたのか、足技が最小限になったのが惜しかったな〜と思うんですが、ひたすら殴って倒していくスティーブンさんもそれはそれでけんかっぱやい人みたいで面白かった。

  • お手伝いさんのヴェデッドに「お疲れ」って2回言うとこの音の違いに震えた。
  • ザップについて「度し難いクズ」って言うところで、大きく変えてる感じもないのに、クズが太字に聞こえる。

クラウス・V・ラインヘルツ

諱(いみな)の暗唱、お疲れ様でした…! まじで意味の無い音の羅列なのであれ大変だっただろうなと思う。ヒロステの時はいろいろくっついてたからわからなかったけど、この方もスタイルがすごい(語彙力)。

チェイン・皇

見たことあるのがハイステの潔子さんで、なかなかの棒演技だったので、正直不安だったんですが、うまくなってて、びっくりしました。この方もスタイルがすごい。すらっとしていて、まさにチェイン・皇という感じでした。「ごちそうさま。楽しかったよ〜」の言い方が好き。

レオナルド・ウォッチ

ライブラのメンバの中では唯一の普通の人、なわけですが、普通っぽさがよく出ていた気がします。
チンピラにボコられた後、ソニックに対して「ちゃんと逃げてたな?それが正解だ」っていうとこ、優しさがよく出てるエピソードで好き。最初のナレーションの「最も剣呑な、緊張地帯となった」の「剣呑な」がなんか好きでした。

ガミモヅ

ヒデ様は悪役がはまるよね…。あと言わずもがななんだけど、刀の扱いがうまい…。レオにぴたっと刀を向けるところで、あまりのブレなさと、そこに至るまでの迷いのない太刀筋に惚れ惚れしました。
ガミモヅとレオがやりとりしてるところに、猪野ザップがしゅぱん、と入ってくるとこが2箇所あって、出てくる瞬間から双眼鏡で見るぞ!って思ってるのに、ついガミモヅに見入っちゃって、出てきてから「あぁっまた逃した!」っていうのを毎回やってました。ついつい引き込まれてしまうんですよね……(この次の作品でも猪野くんとヒデ様共演だったんですが、また同じことをしてしまい、なんなんだろう、この吸引力ってなった)。

ザップ・レンフロ

みなさんお待ちかね、ザップについてです!
まぁ私が語りたいだけなんですけど…。

今回、東京公演の1週目に数回、2週目に数回入ったことで、変化が見えやすかったんですが、アドリブの変化軸で面白かったのは、レオとザップが走って暴走トラックから逃げるところで、最初は特にアドリブなかったのが、猪野くんが「俺の前を走るな!」とペダステのセリフを入れ始め、ペダルを漕ぎ始め、最終的には今泉の汗の拭い方までやってて、そこだけ完全にペダステになってたことですね(笑) これうまいなと思うのが、ザップのセリフとしても違和感ないんですよね。まぁペダル漕ぎはさすがに知らなくてもなんかおかしいと思うだろうけど…w

舞台「血界戦線」のギャグ要素のほとんどをザップが担当しているせいもあり、とにかくザップがかわいかった…。もともと原作でも三枚目キャラではありますが、こんな、猪野くんの可愛さ再発見☆みたいな舞台になるとは思わなかった。

あらためて振り返るとそこまで原作から逸脱はしてないんですよね。同じシーンの表現の仕方がちょっと違うだけというか。猪野くんの声が特に低くないのとお顔がかわいい系統なのもあいまって、ひんひん泣いてるとことか「やだやだ」って駄々こねてるところとかめっちゃかわいい。スティーブンさんに「(ザップは)度し難いクズですが、」って言われて、「本音は意図せず漏れるよね…」ってしょぼしょぼ言ってるとこも好き。

真胎蛋(チェンタイダン)のくだり。
難しい技がちゃんと決まらないと、そいつを沈静化できない、っていう状況で、お前がやれ、ってザップが師匠から、命じられてやるっていうシーンなんですが、やろうとして失敗っていうのを繰り返して、「やだよぉ無理だよぉ」ってなってたとこからの、女の子に求められてることを知って、キリッとした顔になり、下心からの集中力で技が決まるという、ほんとにくだらないんですが、ザップの性格が全部つまってるくだり。原作より明らか尺増えてて、ザップ on Stage って感じですごかったです(笑) 「ザップは…こわくない♡ 」のぶりっこっぷりが圧巻。

「度し難いクズ」と言われてしょげるシーン、直前がアクションシーンだからスティーブンさんのネクタイが出てる場合は直してて、ここの組み合わせ好きな人死ぬやつじゃん…と思いながら見てました。本音は意図せず漏れるよね…の後、途中からスティーブンさんがアドリブ言うようになってて、毎回違ってた気がする。キョトン顔でオウム返しするザップがかわいい。

  • 「痩せろ」「痩せろ?」
  • 「うっせぇ」「うっせぇ?」
  • 「うん」「うん?」

呪いをかけられて猫探しするシーン。
ぐすぐす泣いてるのがめちゃめちゃかわいい。客席降りの時の客席いじりがだんだん変化して言って、最終的には客席に舌打ちするスタイルになってたんだけど、毎回笑いをさらってたのがさすがでしたね〜。客に舌打ちしようという発想がすごい。お客さんの膝元から何か拾い上げて何かと思ったら双眼鏡だった時は笑った。1回メガネを借りようとして失敗してましたが、いやそれ外したら見えなくなるやん…?なんでメガネ借りようと思った…?

2幕、ガミモヅと話してるレオに後ろから抱きつくシーン、レオもびっくりしてるけど、見てる方もびっくりした。(えっ、抱きつい、えっ??) ってなった。腐女子だから幻覚を見たのかなと思ったんですが、毎回やってたので現実でした。原作ではむしろ面倒そうな表情で入ってくるシーンだったので、あのシーンからこれができたのだと思うとすごい。その後、レオがザップをかばうシーンでも、抱きつくような姿勢になってて、そういう解釈では演じてないと思うんだけど、付き合ってると解釈されてもおかしくはない距離感でした。なんであれOK出たんだろう?(笑) かわいいからいいけど…(いいのか)。こどもをあやすように「どちたどちた~~?」って楽しげに聞くザップ好き。

原作でもザップとレオ、仲いいのはいいと思うんですが、ベタベタすることに関してはザップが嫌がりそうな印象だったので、キャストの仲の良さを反映した独自解釈だよなぁと思っておもしろく見てました。ツェッドに対しても、脇での芝居とはいえハグしたりしてるので、猪野ザップはそういう解釈なんだろうな。

真胎蛋(チェンタイダン)のくだりで、途中からレオ役の百瀬朔くんに振り始めたの笑った。
「見た? 見ました?」
「ウォッチしちゃった?」がおっさん感あっておもしろかった(ダジャレだからかな)。
途中から照明さんまで協力しはじめて、千秋楽、真胎蛋の攻撃をよけるザップのマネをするレオに「なんでそゆことすんの? 人が一生懸命やってるのに…」ってすね始めたのがめんどくさい彼女みたいでおかしかった。あなたがしつこく振ったからでしょ…w

レオに神々の義眼を使って猫探しを手伝ってもらえるようお願いして断られるシーン。横向きなんであんまりわかんなかったんですが、おそらく毎回変顔をして遊んでいた猪野ザップ。
ついに千秋楽でレオが「ふざけてますよね?」
ザップ「ううん、ふざけてない。ザップは、いつもまじめ☆」
この時にちょっと客席の方向いてくれたんで表情見えたんですが、なんかね、ぺこちゃんみたいな顔になっててすごかったです(笑) 目が大きい人が目を見開くとぺこちゃんみたいな顔になるんだなと思いました(小並感)。

かっこよかったとこ
かわいいとこだけでもあれなので、かっこよかったとこも。

  • エルダース倒しにいくぜってとこで、クラウスさんを見て、勝利を確信したような笑みを見せるとこ
    • 微妙に毎回表情やリアクションが違ってて楽しみだった
  • 爆破が起こって、なんだ?ってなるとこでさっとレオを後ろにやって前に出るとこ
  • ラストの「行くぞ、レオ」
    • ここぞとばかりに締めでかっこいいザップ!ちょっと音低くするのがめちゃめちゃかっこいいんですよね…。