考える練習

舞台やイベントの感想など

各々の思惑、各々の夢 ~舞台「十二大戦」感想~

原作ミリしらでしたが、きたむーと祥平くんが出るのと、なんかおもしろそう!というので行ってきました。

12taisen-stage.com

ちょっと今回もろもろの都合でチケ手配がぎりぎりになってしまい、結局当日券で入ったら10列センブロでした。とても見やすくてありがたかったです。

あ、いつものことですが、ネタバレ配慮してませんので注意。





まっくらな舞台の奥側真ん中、2階部分に、和泉宗兵さんがすっとピンスポあたって登場。「十二大戦」についての説明が始まります。飄々として軽妙な語り口ながらどこかうさんくさい。

12人の戦士が集められて、各々戦って、最後に残った一人は、なんでもひとつ、願いがかなえられるというシステム。

原作はまじでミリしらでしたが、和泉さん演じるドゥデキャプルが大枠の設定については説明してくれるし、キャラが各々めちゃくちゃ立ってるのと、名乗りが入ってくるのでキャラ名も把握しやすくて、原作知らなくてもストレスなく見られました。知ってたらよりおもしろいポイントとかももちろんあるとは思うんですが。

戦って除々に人数が減っていく間も、各々いろいろ戦略や思惑があって、まったく話を知らない状態で見てると、馬鹿しあいが「おぉ~そうくるのか!」の連続でドキドキわくわくしっぱなしでした。

そういえば客降りが一切なかったんですが、よくよく考えるとこの作品で客降りされても恐怖でしかない(笑)

常に殺し合いなので残虐は残虐なんですけど、なんかカラッとしてるんですよね。各キャラが生死について達観してるからかな。元々西尾作品がそういうとこありますが。殺すの大好き!みたいなトチ狂ったキャラは別としても、常識的なキャラも「そう、死んでしまいましたか」っていうあっけらかんとした感じがある。


途中で何回か、12人集まって、さぁ、ここから闘い開始だ!ってなるシーンのリフレインが入ってたのと、チクタクという時計の音とともに、あれ、これ前にさかのぼったシーンだな?っていうのが入ってて、主人公の寝住(北村諒)は時をかける能力でも持ってるのかな?とは思ってたんですが、実際に、同時にいくつものルートをたどることができる、という能力持ちで、これ、そういう能力ありだったんだ…!?とちょっとびっくりしました。彼だけえらくチートじゃない??(笑) 他の人達は筋力がすごいとか話術がすごいとか、実際ありそうな感じなのに(と思ったけど、死体操れる能力もチートだな…)。


最終的に生き残った寝住の願いが、「全部忘れさせてくれ…!」というのは意外でした。殺されたルートの恐怖も痛みも全部覚えてる、それを忘れたいから、と。

これまでのがんばりが無駄になってしまうのに、貴重な願いの機会をそんなことに使うなんて…と思ったんですが、もしPTSD抱えちゃったら何をかなえてもらってもその後の人生がつらいし、一番合理的な選択なのかなぁ。

「何の願いもない俺が生き残ったのが間違いだったんだ」っていうセリフがあるし、「十二大戦に参戦することは(いくつものルートをたどっても)どうしても避けられなかった」と言ってるあたりからしても、ただただ、死ぬのを避けたくてがんばったってことなのかもしれない。

キャラごとの感想

キャッチコピーみたいなのがおもしろかったので、それもあわせて書いていきます。

子の戦士、うじゃうじゃ殺す、寝住(ねずみ、北村諒)
公式サイトのキャラビジュアル見て欲しいんですけど、この衣装、3次元で見た時の破壊力がやばい。きたむーにしか着こなせない衣装って感じがします。

50音に還元できない音が大好きなので、きたむーの叫び声とか呻き声が終盤たくさん聞けたのは楽しかった(別に負の感情でなくてもいいんですけど、感情をそのまま味わえる感じが好きで)。「忘れさせてくれ…!」のところはめちゃくちゃ情けない表情で最高でした。

勝利に至るまでのところでは寝住、あんまり目立ったアクションがないんですが、勝利が確定してからの振り返りで、この時どういう殺され方をして、この時はどうで、と示すシーンではわりとアクションしてて、ふっと動いて避けるときの身のこなしが軽くてきたむーだーって感じでした(語彙力)。

そういえば「うじゃうじゃ殺す」とは?? って思ってたけど、大量のルート分岐を通っている最中は寝住がいっぱいいることを指してるのかな。

丑の戦士、ただ殺す、失井(うしい、滝川広大)
しゅっとした立ち姿、綺麗な太刀筋がよかった。実直な感じが清涼剤でした。

寅の戦士、酔った勢いで殺す、妬良(とら、今村美歩)
失井とのエピソードが切ない…。

卯の戦士、異常に殺す、憂城(うさぎ、才川コージ)
怪演という言葉がまさしくふさわしい。衣装がもうなんか要素盛りすぎですごかったですが(笑)演技もよかった~。喋りがあどけない感じながらも、こいつはやばいぞ感がにじみ出ていて、とてもよかったです。

辰の戦士、遊ぶ金欲しさに殺す、断罪兄弟(たつみ兄弟・兄、橋本祥平)
巳の戦士、遊ぶ金欲しさに殺す、断罪兄弟(たつみ兄弟・弟、長谷川慎也)
双子と聞いて戦術おもしろそうだな~と楽しみにしてたんですが、序盤から弟が死んでるっていうね…(笑) えっ、もう死んでるの!?早くない!?ってなった。
あれアニメの声に寄せてるのかなぁ、低めの音で、達観してたり嫌らしかったり、楽しかったです。

午の戦士、無言で殺す、迂々真(ううま、横山真史)
横さんも刀ステぶり。まさかの途中で戦意喪失。

未の戦士、騙して殺す、必爺(ひつじい、原勇弥)
なんか名前見覚えあると思ったら松ステでチビ太やってた方ですね。
老獪な老戦士を好演してました。

申の戦士、平和裏に殺す、砂粒(しゃりゅう、竹内夢)
申の戦士、大好き。もうまず声が聞いてて気持ちいい。ちょい高めだけどキンキンしてなくて、ソフト…というとちょっと違う気もするけど、すっと耳に入ってくる感じ。紛争地域での和平交渉に主に取り組んできた人っていう設定なんですが、語り口や間の取り方に、めちゃくちゃ説得力を感じました。

「どうやって折り合いをつけてるんだ?」という寝住の問いかけに「折り合いは、つけない。ずっと悩む」と答えるシーンが印象的。
アクションもキレがあってかっこよかった。

酉の戦士、啄んで殺す、庭取(にわとり、梅村結衣)
衣装が華やか!見てて目がとても楽しかったです。この方も声がすごく聞き取りやすかった。おどおどした感じかと思ったらなかなかしたたかで、戌と協調すると見せかけて殺しちゃうところで、「こうですか?」って、すっと声の温度が低くなったの最高だった。

戌の戦士、噛んで含めるように殺す、怒突(どつく、井坂達也)
刀ステの長政さまがはじめましてでしたが、それに続いて2回目。かみついて殺すのが特技、、と思いきや、実はメインは毒を扱えることという。
獰猛でちょっとがらっぱちな感じで全然別人でおもしろかった。

亥の戦士、豊かに殺す、異能肉(いのうのしし、護あさな)
マシンガン両手持ちでなかなかおもしろそうだったんですが、わりと序盤でおなくなりに…。そういえば終盤の振り返りシーンで、寝住がマシンガンでばばばばばって撃たれるシーンがあるんですが、そこの撃たれ方がめちゃくちゃうまくて感心したことをお伝えしておきます(?)。


元々の目当てはきたむーと祥平くんでしたが、女の子キャラがみんなかわいくて眼福でした。見た目もかわいいし、声もかわいくて、かつ、申の戦士と酉の戦士はとても聞き取りやすくて、こういう役者さんに当たるとすごく嬉しい。なんとなしに見に行った作品でしたが、なかなか掘り出し物でした。