考える練習

舞台やイベントの感想など

悲伝が好きになれなかった女の話

悩み苦しみのたうちまわってる間、いろいろ相談したりしてた方もいたので、最終的に決裂するしかなかったのがとても悲しく申し訳ないなぁ、、と思うんですが、結局、悲伝に関しては、好きになれない部分をのけて、残った部分を愛するしかなくなってしまった。

いろいろ記事を書いてきたけど、これまで刀ステが好きでチケ取りもがんばってきただけに、「集大成」と銘打たれた作品が理解できないのが本当につらくて悲しかった。今まで刀ステを愛してきた気持ちごと否定されたようで、悲しくて悲しくてたまらなかった。

あと一番お金かかってたしね…(円盤先行)。ざっくり9万かな?かかってるんですよ、円盤代で。今回当社比わりとがんばってつむつむしたので。それでこれかぁ…というのもあった。

要は1回2万(以上)のチケ代払って、得たものがこれかぁ…というのが毎回あって、作品があってた時は気にならなかったけど、円盤先行ってそういう意味でもよくないなぁって今回思った。2万のチケ代の価値あるか?って言われたら、どう考えても13,000円ぐらいの他の舞台見に行った方がよかったなってなるもんな…。*1

まぁもう悲伝に関しては推しを見るためにチケ代と円盤代払ったんだなって思うことにしてます。推しにこれだけお金かけたぞって思うとニコニコできるタイプなので…(?)

好きな部分はいろいろあるんですよ。骨喰と義輝のエピソードとか、大般若さんがCVみきしんさんとか、鵺ちゃんがかわいいこととか、山姥切のべしょべしょの泣き顔とか、まるで救世主のような、神々しさを背負った山姥切の真剣必殺とか。

でもね、メイン部分がだめなんですよね。よさがわからない。他の人の感想を読んでも、どこがいいのか理解できるものがなかった。普通あわない作品でも、好きな人たちが好きな理由は理解できることが多いんですが、これに関してはそれが理解できない。そのために余計に不気味さが増している感じがあります。

どれだけ好きな要素があろうが、メインがあわないとだめなんだなっていうのは今回新発見ではありました。私はわりと見方が感覚的なので、気に入る要素をつなぎあわせて見てるんじゃないかなぁと自分で思ってたんですが、意外と物語全体をちゃんと見てたんだなと。そのおかげで今回はしんどかった訳ですけど…。推しが出てれば All OK なタイプになりたかった…。


もはやサビになってきている感じがありますが、悲伝に関しては、わからなさがめちゃくちゃこわくて、見るたびに不安と戦ってたし、あれだけの恐怖を与えてきた作品だから、何言ってもいいだろうと思っている節があります(結局はソフトな表現にしちゃうけどw)。それぐらいこわかったし、今でも「ちょっと難しいかもしれない」と聞くと、心がびくっとする。

例えて言うならルールのわかっていない試合に放り込まれた感じ。知っている競技だと思って参加したら、まったく知らない競技だったような。私の知らないルールが働いているのはわかる、けど、そのルールが何度見てもわからない。

自分の足元の地面がとけてなくなっていくような、先の見えない恐怖。わかったと思ったらまたわからない点が出てくる、ひとつつぶすたびにまた出てくる疑問点、影法師を追いかけるような、終わりのない鬼ごっこ

このままでは気が狂う、と思って、無理やり考えるのを2日間やめたくらい、常に考えてしまっていたし、これ前も書いたけど、本当によく頭がおかしくならなかったなと思う。

その恐怖を乗り越えて、いろいろ観劇してみて、たぶんこのレベルにわからないのってこの作品ぐらいだろうなって感じがなんとなくしてきたので、そこまで構えなくても大丈夫かもしれない、とはなってきてるんですが、良くも悪くも忘れることはできないだろうな。

とりあえず末満さんとは解釈コードが違うんだろうなっていうのはわかったので、そこだけ気をつけつつ…。


結局のところ、どうにかして悲伝をまるごと好きになりたくて、なんとかできないか?と可能性を探ってしまうんだけど、また神経衰弱みたいになっちゃうからほどほどにしないとな…。しばらく情報遮断を検討したほうがいいかもしれない。。

……あ~~~~~もうまじで三日月が邪魔!!!!…動画編集のしかたを勉強した方がいいかもしれない…

*1:あと返金対応になっても円盤代は返ってこないし…

三日月のいない悲伝

もしかしたら和解できるかもしれないということでメモ。

ぼんやり悲伝のことを思い返していて、三日月に共感できない以外はまぁまぁおもしろかったかもしれないってところまで和解してることに気づいたんですけど、そう思った理由に、記憶の中から三日月の印象がだいぶ薄くなってることもあるんだろうなということに気づいて。

芝居の楽しみ方としては不純だけど、三日月がいなければ楽しめる・好きになれるんならそれでもいいのかなぁと。

物語の構造がわかればわかるほど、三日月まわりのエピソードに対する気持ち悪さが増していく感じで、それだけあわない作品だったということを飲み込むしかないんだよな、つらいことだけど、と思ってたんですが、所詮趣味なんだし、別に正しくなくてもいいかなという気がしてきた。無理に気持ち悪いところにつっこまなくてもいいかなと。

三日月をガン無視すればたぶん楽しめるけど、それは果たして可能なのか、そしてそれは悲伝なのか?っていうツイートを前にしたんですけど、記憶の中では可能なんですよね。
もちろんそれは一般的な悲伝とは違う悲伝になってしまうんだけど、私の中の悲伝はそうなんだ、ということで考えれば別にアリな気がしてきた。

9/23あんステフェス感想

今日はスマホから更新しているので変な表示になったりしないかドキドキしています。


9/23あんステフェスに参加してきたので、その感想です。


物販抽選で物議を醸したあんステフェス。しかも一番欲しいパンフが一限。神戸も行くから最悪そっちで買うかな…と思ってましたが、いい感じに参加当日の10-11時の枠にあたって個人的には大勝利でした。まぁパンフと個ブロしか買わなかったんだけども。


前の組の人がいなくなったからか、9:40に前倒しで物販開始したり、レジいっぱいいたり(たぶん30-35人ぐらいいた)、で物販そのものはとてもスムーズでした。えぇ、物販そのものは。整理券で混雑緩和は正しい判断だったと思うけど、公演に参加できる時間と参加できない時間を混ぜた枠しかないのは駄目でしたね。というかなんで混ざっててOKだと思ったのか謎。


今回は凛月の個ブロだけにしようかなと思ってたんですが、貼られてる写真見てたら、えっ、なんか今回のやつかわいい…ってなって、結局Knights全員分買ってしまいました。枠みたいな装飾かわいくない? めっちゃキュート。あらためて書いててRa*bitsのも欲しくなってきてしまった…また後で考えよう。

 

 


さてさて公演自体の感想です。
あんステはおもしろいけど、チケットの倍率の高さに見合うほどではない感じで、いまいちテンションがあがらないのが常で、今回もその例に漏れなかったんですが、いざ始まって荒牧さんの凛月を見たら、ぶわああっとテンションあがりました。あれなんなんですかね、不思議。


物販で個ブロ見た段階であ〜やっぱビジュアル最高〜とは思ってたんですけど、実物見ると、うっわ、好き…みたいな。荒牧さんの凛月は気だるげな感じからくる色気と幼さが同居してるのがいいですね。世界取れる(?)


OPで荒牧さん見てぶわああってなったところから、各ユニットの曲が始まり…順番に2曲ずつやるのはちょっと考えてほしかった感じもありますが、やっぱりアイドルっていいよね…。キラキラしている。


これまであんステを見ていた時は、芝居の合間にペンライトつけたり消したりするの大変だからライブでやってくれれば、つけっぱでいけるし、もっとガンガン振って楽しめるのになぁと思っていて、実際、ガンガン振れるのがめちゃくちゃ楽しかった。劇場だとみんな体は動かさず、手先だけで降る感じじゃないですか。全身でリズム取れるの楽しかったな~。ただ、カラチェンがわりと大変だったのは予想外でした。マチソワ入ったのに、カラチェンに気を取られて、UNDEADからKnightsへの切り替え時の朔間兄弟のハイタッチ未遂を2回とも見逃すというね…神戸ではちゃんと見るんだ…!


上述のようにずっとライブなのがあればなと思っていたんですが、いざライブメインになるともっと芝居パートが欲しいなぁと思ってしまったりして…。やっぱりストーリーがある方が楽しいようです、私は。
TrickStarや流星隊はTSFのエピソードを思い出しながら聞き、Knightsの曲はJOKを思い出しながら聞き、という感じでストーリーと紐づけながら聞いていました。


横浜文化体育館は初めての会場で、最初に発表された時は、なんでこんな小さいキャパのとこにしたの…!と思ってたんですが、あのこじんまり感は入ってみるといいですね。
昼夜ともにスタンドで、夜は正面側の後ろ側のブロックだったんですが、あまりステージまでの距離を感じなくて、距離感の近さが楽しかった。
昼はちょうどセンターステージの横で近くて楽しかった〜 ただ、後方に向いて踊るのがメインなので、大半横か後ろ姿なんですけど、横から見ることってあんまりないよなぁと思って、あれはあれで楽しかった。
お尻のラインが綺麗ですよねとかフォロワーさんと言い合ってました(着眼点)。


推しはダンスうまい方ではないよなぁと思ってるんですけど、(下手という意味でなく)、やっぱり惹き付けられますね。


Ra*bitsが好きなんだけど、相変わらずかわいかった…!新しく入ったみつるくんもめちゃかわだったし、客降りの時の「よくわからんけどとりあえず手を振っとけ」感が初々しくてかわいかったです。


紅月とfineは泣かせに来てましたね。あんなこと言われたら泣くよ。
昼の時に紅月の最後の曲で斜め後ろのお姉さんが泣き始めたな〜と思ったらfineで今度は後ろのお姉さんが泣き始めて、ちょっと面白かった…(笑)

 

早いもので今日はもう千秋楽。楽しんできます。

悲伝 雑感

ばーっと書きたくなって書いたらひとまとまりの文章になったのでアップ。


悲伝の感想でもやもやするポイントっていうのを前にあげてたんですが、そういう風にみるのよくないですよって暗に言われて、そうか、だから理解できないのかなと思って、そういう風に見ないように努めてたんですよ。結局関係なかったんですけど…。その時に、自分としては意識で整理して、そう見ないようにしたつもりだったんですが、ものの見方ってすぐには変わらないんですよね。単純に「そう感じることそのもの」をどうも抑圧してしまっていたようで、そこに気づいてほしい感情の暴走でちょっと人様にご迷惑をおかけしたりもしました。観劇の感想とはいえ、自分の感情を抑圧してはいけないんだなと痛感。


前にも書いたかもしれないんですが、悲伝に関しては、各々がいろいろ考えて行動した結果、この結末に行き着いてしまった感があんまり感じられないんですよね。各々がどうしようどうしようってただ右往左往した結果、こうなった感じがあって、たどり着いてしまった悲劇というよりは、まぁそりゃ解決に向けて行動取らなかったらそうなりますよね、という感じがあるというか。

今年1月に見た、池袋ウエストゲートパークなんかはその点すごく納得感があって。原作の結末も同じ感じだったかはちょっと忘れてしまったんだけど、舞台版はわりと悲しい結末なんですよ。些細な出来事から、波紋が広がって、各々がなんとかしようとして動いて、でも、悲劇的な事態に至ってしまう、という流れがちゃんと描かれていて、「なんでそっちにいっちゃうの」と嘆きたくなる事象はあっても、そうなってしまう理由はわからなくもない、、という感じだった。

その例なんかと比べると悲伝は納得感がないなぁと。なので、うん、まぁそりゃそうなりますよね、、という感じで、いまいち共感もないし、ただ、悲劇的な結末になったなぁという。本当になんというか、「そっかぁ」って感じなんですよね。大変だったね~、お疲れ様っていう。

好きなシーンはいろいろあるけど、キャラ萌えもあるし、もともと推しが出てるシーンはそこに対しての好きもあるからな~。



これまで、刀ステに関しては「つまらなかった」とかの感想ってすごく書きづらいんだなっていうのを他の人の感想読んでて感じてたんですけど、あらためて落ち着いた状態で自分で類することを書いてみて、すごくためらわれるものを感じますね。人気作に対して、つまらなかったおもしろくなかったって感じたのは自分の感覚が間違ってるんじゃないか?っていうためらいがある。


刀ステがあわなくてつらかった、最終的に推し変しましたっていう元同担さんのブログを以前見て、倍率高い舞台があわないのつらいよね…って、某ステのことを考えながら共感してたんですけど、刀ステの場合は余計にしんどいんだなっていうのを今回知りました。

まず、公演期間が長い。普通の舞台なら1,2週間、長くても3週間もたてば本番が終わるところ、刀ステはジョ伝が3週間だったのを除けば1ヶ月半から2ヶ月。その間ずっと、あわない舞台の話が流れてくることになるんですよね。稽古期間を入れれば 2ヶ月半から3ヶ月。しかも刀ステは半年に1回サイクルでやってたので、一年の半分近くが刀ステ。それがあわないとなると、追っかけてるうちの半分の期間はあわない舞台ということに。

それから、本人のやる気。悲伝でなによりしんどかったのがこれ。明らかに本人が楽しそうで、やる気にあふれてるのにこっちの気分は乗らないんですよ。これがなかなかにきつかった…。これまでの刀ステでもSNSの更新は他の公演に比べて多めだったので、あわない人はこれまでのでもそうだったんだろうなぁと思います。このあたりは「推し」という認識だからこそって感じがありますね。本人が楽しそうなのに乗れないのきつい。あう舞台だと相乗効果で楽しいんですけどね。

あと、「見る方も体力使うと思うので…」ってたびたび言及されるのが地味にしんどかったんですが、たぶん推しさん、自分と見る側の体力消耗を混同してたんだなってことに気づいてからは楽になりました。自分で感情作りながら見てみて号泣した時にめちゃくちゃ体力使うなってことに気づいたのと、別作品でめちゃくちゃ泣いた時に特段体力使った感じがなかったので、あれは混同してたんだな…と。


振り返って、あう/あわないよりもっと手前のところで、「わかるやつだけついてくればいい」というスタンスを取られたことに、私は傷ついたし、失望したんだなぁと思います。勝手に期待してた方が悪いと言われればそれはそうなんですけどね。

今後、刀ステに関してはだいぶテンション下がった感じになるのかなぁと思います。お金が節約できるのはいいけど、大きいコンテンツに乗れなくなるのは少し寂しいですね。

また悲伝のような作品が来たときのための心構え

わからなかったことがトラウマすぎて、推しxす○みつさんがまた来るかもしれないことが今一番こわいことなゆいです、こんにちは(どんな挨拶やねん)。

でもわりと可能性高い…と思うので、もし来たら気をつけた方がよさそうな点をメモがてら整理。

重要な点が伏せられていることもある

一番嵌った原因ここですね。
ループまわりの説明がほぼないことにはわりとすぐ気づいたんですが、(2回見て説明がないことは把握した)、まさか三日月の行動理由が伏せられていると思わなかった…。そもそも三日月のセリフがなかなか聞き取れなかったこともあり(音は取れるけど、意味を追っていると理解が間に合わない)、ここに気づくのがだいぶ遅れ、全体構造を理解するのにだいぶ時間がかかりました。

教訓:よくわからないな…と思った場合、そもそも描写がない可能性があるので、同じ作品を見た人に「描写あった?」と聞いてみる


3回見てわからない作品は諦めろ

まさかここまで理解できないとは思ってなかったので、なんとか自力で答えをつかみたいと思ってがんばってしまったんですが、結局理詰めでしか理解できなかった…。そういう作品もあるんだなぁと勉強になりました。未だに感覚的にはよくわからない。
あと、途中でわかるようになった人たちを見てるとだいたい2,3回が目安かなぁという感じがあるので、

教訓:3回見てわからない作品は自力での理解を諦め、人にがんがん解釈を聞いて理詰めで詰める

しかしその点からいうと、す○みつ作品に関してはわからない可能性を考慮して多めに取らないといけないという逆説的なことになってしまう…(笑) 期間や見る回数によっては1,2回目でわからなかったらがんがん聞く方に振った方がいいかもしれない。


あといくつか、ここが原因で嵌ったのかもな~と思ってる点があるんですが、そこに関してはまた別記事で書いてみようと思います。

「また明日!」- 朗読劇「ぼくは明日、昨日のきみとデートする」感想

8/30(水) 20時 松田凌内田真礼 回を見てきました。

これ東宝の企画だったのか~とパンフ見ながら知りましたが、90分という短めな時間でぎゅぎゅっと詰まった、愛と切なさを受け取れる朗読劇でした。

Story
京都の美大に通うぼくは、通学電車で出会った女の子に一目惚れし、思い切って声をかけた。すぐに意気投合し、ごく普通の恋人同士になったぼくたちだが、初めてのことがあるたび、彼女はなぜか涙を流す。ある時、彼女の言動に違和感を覚えたぼくが尋ねると、思いもよらない答えが返ってきた。「あなたの未来がわかるって言ったら、どうする?」彼女の秘密を知ったとき、ぼくたちの恋は“すれ違い”始める――
www.tohostage.com


初めての出会いから少しずつ距離を縮めていく二人。
初々しい様子がとてもかわいらしく、初めてのことがあるたびに彼女が涙を流す以外はとても微笑ましいカップル。松田くんがちょいダサな服装と眼鏡なのがとてもいい雰囲気を出していて、物慣れない大学生役にめちゃくちゃはまってました。

少しずつ名前の呼び方が親しくなっていき、お互いの口調が気安くなっていって、手をつなぎ、キスをし、と少しずつ関係を進めていく様子に、最初のあたりはむずがゆいような気恥ずかしさを感じ、親密になってからはドキドキしました。

朗読劇とは言いながらもちょこちょこ立つ位置を変えたり、動作を入れたり、目線を交わしたりしていて、なかなか見た目も楽しい舞台だったのですが、手を繋ぐシーンで二人が近い位置に立ってたので、繋ぐのかと思ったら繋がなかったのは「繋がないのかよ!」と内心つっこんでしまいました(笑) でもなんだろうな、そのシーン、触れようと思えば触れられるのに、実際には手を繋がず、お互いにすぐそこにある手を意識しながらセリフを言っているのがかえってどきどきしました。

キスシーンや抱きしめるシーンも実際には動作はなしで、地の文で彼による情景描写が入ったりセリフがあったり、だったんですが、想像力で補うしかないのがかえってエロかった…。


序盤からお隣のお姉さんが時折ハンカチで目元を押さえていて、2回目だとなんか泣きポイントなんだろうな~とは思ってたのですが、中盤で、彼女が未来から来たこと、正確には彼女の時間軸は彼のそれと逆行していることが判明します。

彼にとっての昨日は、彼女にとっては明日で、
彼にとっての明日は、彼女にとっての昨日。

後ろの壁に説明のための図解が出るのめちゃくちゃわかりやすくて最高でした。


要は時間軸のズレを利用した記憶喪失モノなんですよね、これ。
彼女側から見ると、時がたてばたつほど、彼の過去にさかのぼっていくので、親密さが逆行していってしまう。初めてのことをするたびに彼女が泣いていたのは、それが彼女にとっては「最後」だったから、というのを聞いたあたりからじわじわ涙が。

初めてのハグも、初めてのキスも、初めての手つなぎも、彼女にとってはそれが最後。

「つきあってください」という言葉は、明日からは付き合ってない状態に戻ることを意味する。

そして、初めての出会いは、最後の逢瀬となる。


あれ、でもそうすると、彼にとっては過去の出来事でも、彼女にとっては未来の出来事なのに、なぜちゃんと記憶がつながってるようになっていたのか?となるのですが、未来の彼(彼女にとっては過去の彼)から、詳細に聞いていて、その筋書き通りにやっていたという。

「あなたの過去を変えたくないから、詳しく教えて。そのとおりにやるから」
「でもそんなの楽しくないじゃん」
「大丈夫、一緒にいるだけで楽しいから」

というのがもうねー…。愛の大きさがすごい。

さらに細かい設定として、彼女は時間軸が逆な世界から来た異世界人で、5年に1回、1ヶ月しか会えないことが明かされるんですが、彼女が5歳、彼が35際の時に、命を救われた時にひとめぼれして、それ以来、二人の年齢が同じになる20歳を楽しみにしていたというエピソードが出てきて、めちゃくちゃキュンキュンしたよね…。

事情がわかってからはだんだん彼にとっては彼女と会える最後の日が近づいてくることになります。そして、最後の日。彼女にとっては初対面の日。
「おはよう」と言う彼に、「おはよう、ございます」とぎこちなく返す彼女。

別れの時が近づいて、初対面だったのに、すぐに違和感なくなったよ、という感じのことを言う彼に、彼女が「『おはよう』にこれまでの関係がつまってたから」っていうのがすごくよかった…。実際、彼の方のセリフは本当にそういう感じだったんですよね。これまで彼女と紡いできた思い出が、関係性が、全部つまっていた。


そこから、ターニングポイントとなる思い出が巻き戻して追想されていきます。彼女視点ではそれこそが未来へ進む、本来の時間軸だから。そして、彼女が泣いたポイントが彼女視点で再演されていって…全部、彼にとっては初めてだけど、彼女にとっては最後。

「知れば知るほど、一緒に過ごせば過ごすほど、どんどん彼のことを好きになっていった」
一方で、どんどん彼の方の時間は巻き戻っていく。
「抱きしめあわなくなって、キスしなくなって、手をつながなくなって」
名前の呼び方が、どんどん戻っていく。
「でも、私はどの呼び方にも、これまでの全部の関係を込めるから。たかとし、たかとしくん、南山くん」


そして、出会いの日まで、戻ってきます。ぎこちない会話をし、もう時間だからと言う彼女に彼が「また会える?」と聞き、「うん」と答えると、「また明日ね」と。

彼女にとってはそれが最後。明日はない。でも。

「また明日!」

それぞれの思い、それぞれの願い - 舞台「野球」~飛行機雲のホームラン~ 感想

2回見た段階での感想がそのときの感情が閉じ込められてる感じがしていいな~と思ったのでひとまずアップ。

8/1(水)に1回目、8/4(土)昼公演で2回目見ました。

4日は舞台「野球」からの七ステのはしごだったんですが、温度差で死にそうになりました。パワーとガッツで世界を変えるぜ!といわんばかりの七ステの明るさによって、野球のしんどさが増すという…。

この舞台について語ろうとするとつい、舞台「戦争」と言いそうになる。それぐらい、テーマとしては戦争なんだけど、がっつり野球をしている、そんな不思議な舞台でした。

もうなんかとにかくぼこぼこに泣かされて、1回目の時は一幕の段階から4-5分おきに泣くみたいな感じで、二幕も見終わった時には泣きすぎて頭痛くなってたぐらい。

まだ全然序盤、赤紙が出てきた段階で泣いてしまったのは我ながら早いわと思った(笑)絶たれてしまう命の予感みたいなものをぐわっと感じてしまって…。ここを2回目に見た時は「ずしん」とはきたんだけど、泣きはしなくて、(まぁそうだよね、2回目だし)と思ってたら、しみじみとした中佐の「ホームランだ」で泣き、安西くんの清々しい「でも野球だ」でさらに泣き…結局1幕から泣きまくっていた…。

ドラマはすごく感じたけど、特に泣きはしなかった、という人も見かけたので、何かささるものがあったんだと思う。

一幕は説明なしに野球が始まって、そこに細切れに別のシーンが挟まる感じなので、最初はなんなんだ…??と思って見てたんですけど、徐々にピースがはまっていって、「そういうことなのか!」とわかることが増えるにつれて加速する泣き。本当にパズルをぱらぱら埋めていって、最後に大きな絵が完成するみたいな感覚があって、緻密に組み立てられた構成って感じですごかった。

ずっと色濃く、明日には死んでしまう、これが最後の野球なんだ、というのが通奏低音のように流れてて、もう泣く準備は整ってるぜって感じではあるんですが、そこにそれぞれの思いや願いがのっかってきて。もっと野球がしたかった、というのもあるし、こういう職業につきたかった、というのもあり、それぞれに人生があり、思いがあるんだ、というのが描かれることで、余計に彼らの人生が明日終わってしまうことがつらくなるという。

不思議だったのが、フィクションであることはもちろん頭の中ではわかってるのに、本当に彼らが生きてるような、その役柄自身であるような感じがしたこと。「彼らの姿を目に焼き付けておかないと」と必死に見る自分がいました。