考える練習

舞台やイベントの感想など

「正しい」のゆううつ

Aさんの個人イベントの仕組みに関して、ファンの間でほんのり不満が出ていることについての個人的な雑感です。


私が参加し始めた3年前の段階で、すでにAさんの個人イベントでは写真つきの身分証での本人確認が実施されていて、複数名義積みが基本的にできない状況だった。

その頃は私もまだゆるゆるのオタクだったから、「ちゃんとしてるんだな」ぐらいの認識だった。けど、このシステム、ガッツ寄りのオタクにとってはわりとつらいシステムだ。良席狙いの大量名義積みができないのはもちろん、倍率が高そうな時の保険としての複数名義積みもできない。

しかも途中から、1部2部のどちらかしか応募できない、というタイプの制限が加わるようになった。それでもさほど文句が出なかったのは、事務所からするとメリットがない本人確認をわざわざコストをかけてやってくれていることに加え、最大限の努力をしてくれているという認識があったからだと思う。キャパが足りないとなったら、次のイベントでは前回より大きい会場を用意してくれていた。

また、抽選での先行の後、一般発売が必ずあったので、先行段階では1人1つしか当選しないという制限があっても、「がんばれば複数回参加可能」だった。支払い流れのキャンセル分もあったし。今思うとこのチャンスがあることがけっこう大きかったなと思う。制限内容はその時々で多少違いはあったものの、基本的には1人あたり1つ(もしくは1会場あたり1つ)しか当たらないなど制限をかけることで全体に当たりやすくしつつ、それでは足りない、複数行きたい、という人はがんばれば複数確保できる、という。


……というのを踏まえて今回。フリーになったことで、これまで事務所側で蓄積されていたノウハウを利用できなくなってしまったせいもあるとは思うんだけど、前回埋まらなかったわけでもないのに、前回よりも狭い会場。また、これまではニコ生チャンネルの先行のみだったのが、FCでの先行とニコ生チャンネルでの先行の二本立てになったためか、基本的には1人1つ当選の制限のはずが、1つも当たらない人もいれば2つ当たる人もいる、というなかなか不公平な状態に。かつ、一般発売はなし。要するに、イベントに行けるかどうか、何回行けるか、というのが、わりとハードモードの運ゲーになってしまった。

1つも当たらなかったとしても、一般発売で確保できればまだ「勝ち取った」と思えるし、取れなかった場合は「自分の努力が足りなかった」と思える。やれるだけやって駄目だった、という実感がある。東京・大阪で合計4部あるうち、先行で私は1つ当選して、一般発売があるだろうからそこでもう1つぐらいは確保したいな…と思っていたら一般発売は行わない旨の発表があり、気持ちの持っていきどころがない、なんともいえない気持ちになったのを覚えている。


全体に行ける機会を広げつつ、ガッツがある人にはがんばれる余地を用意しておくのがたぶんベストなのかなと思うんだけど、今回その余地をつぶして、どれだけガッツがあろうとも、運が悪ければ1回もイベントに行けない、そういう仕組みにしてしまった。もとから「全体に広く浅く行き渡るように」という方針ではあったと思うんだけど、ガッツ向けの余地を完全につぶす形になったのはわりと微妙な気がしている。

ただ、余地があると、慣れた人ほど確保するチャンスが増えることになるので、新規から古参まで含めた全員への「平等さ」という意味ではその余地はない方が「正しい」。そう、そっちの方が圧倒的に「正しい」のだ。このことに気づいた時にすごくしんどくなった。Aさんサイドの方針は何も間違っていない。全員へのチャンスの平等さを目指すなら、その方針はとても「正しい」。でも、労力を払ってでも全部行きたいガッツからしたらたまったものではない。ガッツがあればあるほどしんどい仕組みは「正しい」んだろうか?

がんばれる余地をなくす方針で行きたいなら、行きたい人が行きたい回数だけ入れるキャパを確保するのがたぶんベストだと思うんだけど、イベントでのコメント聞いてる限りでは現状、そこはあまり期待できなさそうなので、なんか、危ういな~~~と思う。