考える練習

舞台やイベントの感想など

壮大な叙事詩 - NTライブ「リーマン・トリロジー」感想 (ほぼネタバレなし)

NTライブというのは、英国ナショナル・シアターが厳選した舞台の映像を収録し、各国の映画館で上映するプロジェクトです。
https://www.ntlive.jp/home

なので、今作もすでに上演された芝居なのですが、本公演見た方々の、「これは面白いぞ!」という感想見て、気になったので、公開初日に行ってきました。

もうね~~めちゃめちゃおもしろかったです。3000円で見られるので、上映館が近くにあって お時間ある方はぜひ見てほしい。土日終わってから記事をあげるなという話ですが…笑。

上映館と上映スケジュールはこちら。


ユダヤ移民であるリーマン一家の長男がドイツからアメリカに移住するところから始まり、リーマン・ショックが起こる2008年までを描いた物語です。

三人称の語りがベースで、そこに芝居が差し込まれる形なので、最初は朗読劇でも見てるようで、不思議な芝居だな~と思ったんですが、常に客観的なところから見渡してる感じが、壮大な叙事詩という印象で、リーマン一家の歴史はアメリカの歴史と絡むこともあり、人の営む歴史のダイナミズムを感じさせるようで、途中から、「人が営む歴史」に対して、エモさを感じて、じんわりとこみ上げてくる気持ちに涙ぐみながら見ていました。

出てくる登場人物がみんなキャラが立っていて、そのくせ憎めない感じなのがまたいいんですよね…。俳優陣の演技のうまさももちろんなんですが、シーンの抽出の仕方もうまいんだろうな。150年を3時間半で描くということから、一人称での(というのも変な言い方ですが)芝居シーンは細切れに挿入されるにも関わらず、みんなすごく人間くさい。公平さを重んじるハーバートくんが子供時代に宗教の時間に神の行動について難癖つけてるシーンが好きw

最終的にはリーマン・ショックで終わることになるので、最後は「終焉」とでもいうような形で終わるのですが、栄枯盛衰という感じで、そこに至ってしまう流れが見ていてどこか哀しくて、なんともいえない気持ちになりました。かといってリーマン万歳みたいな話でもなく、投資銀行を始めるあたりからは物ではなく金を動かし、それによってお金を得ることに対して、リーマン一家内でも意見が割れたりして、お金でお金を生むことに対する批判的な目線もあります。

出演する俳優は3人だけで、すべての登場人物を演じ分けるのですが、すごいのが、男性・女性・子供ふくめて、それぞれちゃんと別の人物に見えること。複数の女性を続けざまに演じるシーンがあるんですが、トータル7人かな?ぐらいやってて、全部台詞回しから仕草から違ってて、ちゃんと別人で、圧巻でした。

それから舞台装置と音楽も素晴らしかった。
透明の四角い箱の中にオフィスっぽい小道具大道具が配置されているところから始まるのだけど、映像とあわせて、使い方が斬新で面白い。「そう使いますか!」という感じ。公式ツイッターにも画像上がってたけど、見に行く方はぜひ作中で確認してほしいなと思います。

音楽は2回目の休憩の最後に解説があるんですが、ピアノの生演奏で、役者さんの動きに合わせたりもしてるそうで、邪魔せず寄り添いつつ、エモさを盛り上げてくれる感じで音楽もとてもよかった…。

もう一度観に行くつもりなので、詳細な感想をその後でできたらあげたいな。