考える練習

舞台やイベントの感想など

舞台「憂国のモリアーティ」感想、というか浮く椅子について [※1/15 追記]

椅子が浮く意味がわからん、というのを聞いて考えていたら 1,000字を超えていたのと、同じようによくわからんってなってる方がいそうだな~と思ったので、そこだけ先にあげてみました。

たぶんあの椅子の解釈はいろいろ読み解き方があると思うので、私はこう考えましたという一例です。

舞台見てないと意味がわからないと思うので、見てから読むの推奨です。



ちょうど双眼鏡を覗いていたので、すーっとつるすための金具が写り込んできて、あ、なんか吊るすんだなってわかってしまったのと、(金具がとてもよく見えました…)、カチャカチャいう音が聞こえてきたのはちょっと笑いそうになりました。

椅子が浮いたのは最初「?」というか、「吊るすの椅子かよww」とは思ったものの、あ、そういうことかってわりとすぐに納得いったんですよね。私は西田さん演出の舞台は2.5/オリジナル問わず、まあまあ見てる方だと思うんですが、ああいう表現は見たことないから西田演出に慣れてるためではないと思います。……って考えてて気づいた。私はカクシンハンという劇団のお芝居が好きなんですが、そこがわりと暗喩使うので、それで慣れてて違和感感じなかったのかもしれない。

観劇後に友人と話した時に、
友人「椅子が浮いたのが謎」
私「死んだことの暗喩かなと」
友人「倒れただけで十分じゃないですか?浮かせる意味がわからない…」
私「うーん、やりたかったんじゃないですかね…」
みたいな頭の悪い返答をしたんですが、そういえばあれ二段階じゃなかったかな。
「お前、こんなことしていいと思ってんのか!」的な揉め or「ぐっ」ガターン的なのがあってその後死亡だったら一応意味あるのかなと。記憶がおぼろすぎてわからんけども…(悲しい)。

彼らを殺したことって、自分たちが助かるためもあるけど、彼らに罰を与えるためという意味合いもあったと思うので、「吊し上げ」がかかってるとかもあるのかな。

あの事件は共犯者となる最初の一歩という意味でも、三兄弟にとって大きな意味を持つエピソードだと思うので、ちょっと違和感を感じるような、何かごろっとしたものが残る形で演出してることは不思議ではないかなと思います。

あらためて振り返ると三兄弟が三角形に立ってて、椅子が斜め上に浮かんでるの、彼らの関係性の象徴という感じがして、すごくよくできてるな~という感じがしてきた。

椅子が倒れてる状態だと、三兄弟と並列、同じ高さになるんですけど、吊り上げられていることによって、椅子が「上」になるんですよね。そのせいでちょっと圧迫感がある。あの事件をきっかけとした結びつきは彼らにとって、絆であり、同時に縛るものでもあると思うので、それを象徴するものとして、椅子の位置関係、とてもよく考えられている気がします。

あと、単純に宙に椅子が浮いてるとすごく違和感があるので、上述の違和感を感じるようにしたい、という狙いもあるかもしれない。

少なくとも椅子の捌けさせ方の都合ではないので、わざとなんですよね。

私は違和感感じなかったなぁ、なんでなんだろ?というところから考えてみたんですが、意外と深いな…椅子…(笑)

個人的にああいう、セリフの音声と椅子が倒れることによってエピソードを表す、みたいな表現が演劇ならではという感じがしてわりと好きなので、テンションあがりました。あとあれ、人を出さずにほのめかすことで不気味さが出る感じがするので、今作にはその点でもぴったりだなと思います。

[2020/01/15 追記]
実は上の記事内でも、私自身意識せずにするっと意味が移り変わってしまってるんですが、倒れた椅子は個別の死で、上にあがった椅子はエピソード全体の象徴ですね、おそらく。