考える練習

舞台やイベントの感想など

「イノサンmusicale」に見る、2.5の難しさ

私個人の所感

舞台化きっかけで原作を知り、イノサン1巻からイノサンRouge10巻まで読了した状態で観劇しました。

  • 初日:うーん、これは……
  • 2回目:各シーンはいいんだよな、つながりがいまいちなだけで… ※ただし説教パートはクソ
  • 3回目(楽日):あれ…? 普通に楽しいな…? ※ただし説教パートはクソ

初日は「たとえまわりが全員立とうとも私はスタオベしないぞ」ぐらいのつもりだったんですが、楽日は普通に楽しかったので、特に抵抗感もなくスタオベしました。(ただし説教パートはクソ)

なので私はあんまり怒りはないんですよね。いろんな人が指摘してるように、一番ダメなのは脚本と演出だと思うんですが、個人的には、それだけでもなくて、いろんな要因がからみあって、この結果になったように思っています。

プリンシパルたちが全員演技力と歌唱力が高かったら、わりと見れるものになってしまってたんじゃないかなぁという気がするんですよね (それがいいか悪いかは別にして)。 で、脚本家さんにしろ、演出家さんにしろ、おそらく演技力高い人たちとしか仕事したことなかったんじゃないかなぁと。

膨大な量の原作をさばく難しさ

基本的に舞台は2時間~2時間半、長くても3時間程度には収めなくてはいけないメディアで*1、それに比べれば長さの制限のゆるい漫画やアニメを舞台化する場合って、「いかに省くか」がめちゃくちゃ重要なんですよね。

特に今回みたいに、約20巻分を一本の舞台にする場合、エピソードを丁寧に拾っていたら当然尺が足りないわけで、「これだけは外してはいけない」っていう作品のエッセンスを見極めて、それがちゃんと表現できるように、エピソードを構築し、必要ならエピソードを組み替えたり要素にばらして再構成したりする必要があります。

で、一番やってはいけないのが、全体から重要度の高いエピソードをまんべんなく拾ってくること。そう、イノサンmusicalがやってしまったことです(笑)。いや、まぁやってもいいんですけど、そうすると、なんとなく全体にどういう話なのかはわかるんだけど、各エピソードの繋がりがわかりづらくなるので、ダイジェスト版になってしまうんですよね。名作のあらすじ紹介みたいになる。

シャルルとマリー、二人の話をそれぞれやろうと思うと、エピソード的には確かにあれ以上削れないよな~という感じはあるので、どっちかに絞るべきだったんじゃないかなぁ。作品テーマ的にはマリーメインが妥当かなと思いますが、そうなるとルイ関連のエピソードがマリー・アントワネットに関係ある話しか出せなくなるので、どうなんのかな…。盛り上がりポイントが難しそう…その場合はオリビエのくだりでラストになるのかな。

オリビエのくだりで思い出しましたが、盛り上がり方もタイミングがうまくないんですよね。オリビエ救出のところで、これで終わりかと思いきや、そこでは終わらず、ルイの処刑で終了なんですけど、2つのエピソードの間があまりあいてない上に、オリビエのシーンの方が盛り上がるので、1つの舞台のクライマックスの作り方として、バランス悪い感じがする。オリビエのシーンをもう少し前倒しするか、ルイのシーンの方が盛り上がるようにするかすべきだったのでは。

あと気になったのが、狂言回しである老婆のセリフがいちいち冷笑的なんですよね。イノサンは、自由を勝ち取ろうとすること、夢を見続けることの尊さを描いていると私は思っていて、舞台版もここは変わらないと思うんですが(説教パートのセリフを考えても)、老婆がいちいちそこに水を差すようなことを言う。いち登場人物として出てるだけなら、当時そういう民衆も多かっただろうし違和感ないんですけど、語り部としての役回りを担っている人が作品テーマを冷笑するようなことを言うのは変な感じがします。まぁでもここは好みの問題かもしれない。

気になったところだけでそこそこの文字数になってしまった、、。
よかったところはまた別記事で。

*1:収まらない人もいるけど…