考える練習

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舞台「スーツの男たち」感想

この舞台をオススメする感想記事を読み、気になって見てきたのですが、お芝居見た感があって、すごくよかったです。

場所はアトリエファンファーレ高円寺。座席は公式サイトによると80席ほど。小劇場久しぶりなので、こじんまりした感じにすでにあがるテンション(笑) 物販にブロマイドがないことに驚きつつ、パンフを試し読みしてみたら面白そうだったので購入しました。(B5サイズで20ページほど、1,000円。この感じも小劇場っぽくてよい)

3列目か4列目くらいまでフラットで、それ以降はわりとがっつり段差あり。私の座席がF列で舞台上のキャストが立つとちょうど目線が同じくらいになる列だったんですが、目線があいそうであわなくて、板の上は別の世界線感があって面白かったです。

舞台上のセットはすごくシンプル。中央に、どっしりとした椅子がこちらに背を向けて置かれていて、その椅子にはりつくように木製のダイニングチェアのような椅子が3つ。それから舞台脇に寄せるようにおかれた小さいテーブル。シーンごとにこの椅子とテーブルがいろいろ違う配置で使用されてました。

暗転があけたら、中央の椅子に座って何かメモに書きつけているマックス(安西慎太郎さん)。そしてもう1人の男、ボビー(章平さん)が隣の椅子に座って落ち着かなさげにしている。このシーンからすでによくて。すごい自然なんですよね。そこに自然に「いる」。

彼らはマフィアの一員で、これから殺しの仕事があること、直接手を下すのはボビーであることが徐々にあかされ、そのことで緊張して落ち着かないボビーがマックスにベラベラベラベラ、どーでもいいことを延々喋ってマックスをうんざりさせるんですけど、このくだりが意外と見てて飽きないんですよね。ボビーの口調が一本調子ではなくて、本当に思いつくままに喋っている感じ。章平さんは、戦国無双で見たことしかなくて、その時は微妙な印象しかなかったんですが、この人ちゃんとお芝居できる人なんじゃん…!(失礼)となりました。

ターゲットが現れ、二人は仕事をした…んですが、なんと、本来殺す予定だった人と違う人を刺してしまった模様。なぜ二人してそのことに気づかなかったのか謎ですが、暗かったか、ターゲットは帽子かぶってたか何かしてたんですよね、きっと…。仕事をしくじらないと話が始まらないから仕方ない。

動揺するボビーに、落ち着けよというマックス。ここ、最初はマックスの方が、ちゃんとボスに話せばわかってくれるとか言ってたような気がするんですが、勘違いかなぁ、ちょっとこのあたり曖昧。

途中からマックスは組織から逃げることを提案しだすんですが、それに対してボビーはこれまで逃げようとして捕まってしまった人たちの名前をあげ、ボスに謝ろう、謝れば許してくれるはずだ、と説得。最終的にボスがいるところまで車で夜通し移動して、謝りに行くことになります。

その道中もボビーがずっと喋ってて、あまりにも自然に喋ってるので意識してなかったんですけど、あれ地味にすごいですよね。セリフ量やばそう。ボスがいる街について、ホテルで一眠りしようぜってなるんですけど、そこでもまたいろいろしょうもないことでマックスに話しかけて最終的にキレられるボビー。もう俺は寝るって言って、マックスがジャケットを脱いで、身体にかけて寝ようとするんですが、その姿がなんかかわいかった。何回かボビーに起こされた後、ついに頭からジャケットをひっかぶるんですが、またキュートでした。さんざんキレられてるのに一切空気を読む気がないボビー、改めて考えるとすごいな。これまでの関係性もあるとは思うんですけど。

マックスが寝たところで、ボビーが悪戯心をおこして、マックスがしょっちゅう書き付けていたメモ帳を取り出して中身を見ちゃうんですけど、そこに自分たちのエピソードが書かれていること、そしてその内容が本として出版される予定であることを知ってしまいます。翌朝マックスを問い詰めると、「普通の生活がしたかった」という吐露が。そして、本の出版を機に、この仕事のやめるつもりであることも。

二人で口裏併せをして、殺すやつを間違ったのではなく、ターゲットが現れなかったことにしよう、と言って、ボス(羽場裕一さん)のところに挑むんですけど、ターゲットがそこにいたことをボスが別のルートから知っていたことにより、口裏併せの前提がくずれてしまい、そこから上手いこと誘導されて、結局本当のところを全部言ってしまうんですよね。ここの流れがまったく無理ない感じで、その分、ずるずると駄目な状況に陥っていくのにどうにもできない絶望感がすごかった。

ボスが、お前はニューヨークに帰った方がいい、としてマックスを帰し、ボビーと二人きりに。「マックスの様子がどうもおかしい気がするんだ。お前何か知らないか?」と切り出すボス。もうこの時点でボビーが動揺してて、あぁこれ駄目なやつだ…と思いながらも、ボビー、そこはしらばっくれるしかないんだ…!踏ん張れ…!と思って見てたんですが、結局、まだボスを信用しているボビーはマックスの様子がおかしいことを話してしまい、そこで、マックスを始末することを命じられます。

おそらくこれからニューヨークに帰るところだろうマックスがぼぅっとベンチに座っているところに現れるボビー。それまでのボビーとどこか違う雰囲気を感じ取って怯えるマックス。ここのボビーの雰囲気がなんとも得体の知れない感じで見てて非常に怖かった。確かにボビーなんだけど、全然雰囲気が違う。明るさの中に、何か腹に一物抱えてる感じ。「これから旅行に行くんだ」とマックスが言うのに対しての返答だったと思うんですが、「そうか」とちらっと笑って言うセリフがあって。その笑い方がどこか大人びた、哀しげな笑い方で。

その後結局、ボビーはマックスを刺して殺してしまいます。上記の笑顔の表現といい、これから殺すという時に、すっとボビーの表情が冷たい表情になるところといい、お芝居的にはめっちゃいい…んですが、ここは見ててつらかった…。殺した後、そのことへの後悔を振り切ろうとするかのような行動もしてるんですけど、ボビーにとってマックスはどういう存在だったのかな…。この殺しの後から、それまでマックスが悩まされていた、殺した人たちの叫び声が聞こえる、という現象がボビーにも起こるようになる…という示唆で物語は幕を閉じます。

最後はとにかくやるせないんですけど、シリアスなシーンの中にがんがんコミカルなやりとりが入ってくるので、全体はそれほど重たい感じでもなく、また、登場人物たった3人でほぼずっと会話しっぱなしなので、お芝居見た感があって、見終わった後の満足感がはんぱなかったです。

他、印象に残ったところ、書きそびれたこと

  • ターゲットが現れた瞬間、二人の表情がさっと変わるのがいい
  • スーツ姿とてもよい…
  • トイレ行ってくるって言って、舞台のすぐそばにあるお手洗いに入っていったのは笑った。ちゃんと水を流す音まで流れる
  • ボスが突然キレだしたところでの、マックスの「とりあえず儀礼的な笑みを浮かべつつ、何を望んでるのか必死で考えてる」感じにとても萌えた。「理不尽な上司に対応する部下」感。


カーテンコールがお辞儀のみで、「ありがとうございました!」がなくて、そういえば普通のお芝居ってこうだよな~と。3回目のカーテンコールの時に安西さんが章平さんの方むいて満足げな感じで笑って、それ見て章平さんも笑顔になってたの、ほっこりしました。