考える練習

舞台やイベントの感想など

リーディングシアター「アドレナリンの夜」 10/7(土) 17時回 感想 ※ネタバレあり

ホラーは正直苦手なんだよな~、でも推しが出るならみたい、、ということでチケット取ったんですが、思ったより怖くなくて助かった。

実をいうとホラー自体は嫌いじゃないというかむしろ好きで、子供の頃は夏場の怪談特集とか喜んで見たり聞いたりしてたんですけど、見た後しばらく生活に支障をきたすんですよね…。お風呂場で目をつぶる時とか夜、電気消した時に急に怖くなったりしてしまうので、それがしんどくて避けるようになりました。話題になってたりするとすっっごい気になるんですけど、でも見ない!(笑)

ただ今回、怖いの苦手な人向けの演出バレみたいなのがまわってきていて、後ろにうつる映像が怖いという情報があり、途中からほぼそこ見ないようにしてたので、そのおかげで怖さがだいぶ減ったというのがあります。

なので、本来見るべき部分をある意味見ずに鑑賞したことになるので、完全体での感想とは言えないかもしれない。。

冒頭

後方から客席通路を通って貞子っぽい見た目の女性が登場。私はこれ演出バレ読んで知ってたので、「おぉ、これが噂の」みたいになったんですが、知らなくて通路席座ってたらめちゃめちゃびびりそう。
そのまま壇上にあがり、ピアノのところに座る女性。で、この方、そのままピアノを弾きます(笑) これ知らなかったら絶対、いやお前がひくんかいってなるよな…(笑)

その後キャスト4人が登場。全員おそろいの黒のカッターシャツとパンツ、靴も黒。どこまでボタンあけるか腕まくりするかどうかなどは各々に任されてるっぽい。

各々名前を名乗りつつ、案内人のような感じで世界観を説明。この後、話が始まったらもう後戻りはできませんよ、みたいなやつ。推しのビジュアルがよすぎたせいか、なんかあんま頭に入ってこなかったので、だいぶおぼろです(笑)
役名じゃなくて、それぞれの名前を名乗りながらなんですけど、でも別に本人人格ではないなって感じの喋り方だったので、なんか不思議な感覚だったな。パラレルワールドに放り込まれたみたいだった。
全員いったんはけて暗転。

最終話の「台本」は4人全員での朗読で、それ以外はすべて一人での朗読でした。
ところどころ、他の役の録音でのセリフが入ったりはするけど、壇上にいるのは一人。

真夜中の恋人(加藤大悟)

気に入って聞いていたラジオが実はあの世からの放送だった、という話。わりと早い段階からオチが読めてしまうのがちょっと残念。話の構造としては定番だと思うんだけど、通常こういうのどうしてるんだろうな。

ただ、あんなに気に入っていたラジオなのに、あの世からだとわかった瞬間から恐怖の対象になってしまうのはおもしろいなと感じた。

深夜の警備(定本楓馬

防犯カメラの映像があることによって怖さが増す感じがよかったな~。
この話で、なるほど、後ろに怖いのがうつるってこれか、というのを学習。

エレベーター(廣野凌大)

残業で遅くなり、さて帰ろうとエレベーターに乗ったら止まってしまい、、という話。
今日遅くなるからさ~と電話してる相手、てっきり一緒に住んでる彼女かと思ったらお母さんだったところが一番意表を突かれたかもしれない(笑) お母さんに対してそんな甘いトーンで電話してるんですか…!?(どこに驚いてるんだよ)
最終退室でエレベーター乗る時の不気味さに共感してしまった。暗い中にぼうっと光るエレベーター、異界への扉っぽさが半端ないんだよな。
途中で乗り込んで来た人と面識がなさそうなのに、食堂で普段何を食べてるかを把握されてるところから、これはストーカー的な方向の話なのかなと思ったら全然関係なかった。

エレベーターが止まった理由、飛び降りのせいで止まりました、なんて言われたらまだ閉じ込められてる状態の人が震え上がってしまう、下手したらパニックになる可能性もあるから、普通そこらへんって濁すんじゃないのかなぁ、、というのがちょっとひっかかってしまう。しかもすぐに名前がわかるのもおかしくない? まだ現場を誰も確認してないのに…。いやそれとも上の階には人がいたのか? それはそれでその人止めなかったのか?ってなるからちょっと無理あるよな。

ビデオレター(安元洋貴

妻の母からの息子宛のプレゼント、なぜか知らない女の子宛のプレゼントも同封されており、、というところから始まる恐怖。
この話はわりと好きだったかも。最初同じく怖がっていた妻も女の子が見えるようになったらナチュラルに受け入れているのが怖い。

麻酔(加藤大悟)

最初、霊魂が離れてなくて、まだ自分が生きてると誤認してるパターンなのかなと思ってたんですが、焼かれる時に感覚が残ってたぽいのを見ると、仮死状態で死んだと誤診されたけど、実は生きてたパターンなのかな…?
葬式で動きだして、実はまだ死んでなかったことがわかる、というのは実はあるある(というほど多くはないと思うけども)らしいので、こういう不幸な事故もあったんだろうな…と思いつつ見ていた。
菊の花に気づいたあたりからの絶望感がつらい。

ドライブ(定本楓馬

これも早々にオチが見当ついちゃうやつだけど、お嬢ちゃん"たち"…? からの緊迫感がよかった。

隣人(廣野凌大)

廣野くん、メガネを外して登場。あんちゃんって感じの役だったので、役作りの一環?
飲み会で友人とわいわい話してるシーン、「かんぱーい!」とか「なーい!」とか、もはやマイクなくても後ろまで届くだろレベルのデカボイスでめちゃめちゃ元気よくてかわいかった。
録音音声の「俺なんて7万で3畳だよ」にぼそっと「高すぎだろ」ってつっこんでて笑った。

いわくつき物件ではないとは言うが、明らかに安すぎる家賃、隣人がうるさいんですよね~というあたりで予想はついてしまうけれども、ここも「真夜中の恋人」と同様、存在しない人たちの声であることに気づいた時から、意味合いが変わってしまうのが面白かった。

インターホンが鳴った時の、確実に何かが起こる、でも行かないわけにも行かない感。毛布を被って恐怖に怯える声、ラストの絶叫、とても良かった。

ホテル?(タイトルが不明) (安元洋貴

撮影のためにホテルに泊まったはずが、廊下は医者や看護師が走り回っており、これは悪い夢だ…と眠るもまたしても同じ夢を見てしまう…という話。
撮影のためにというのが妄想で実際は精神病院の入院患者とかなのかな?と思ったんだけど、どうなんだろう。

台本(4人全員)

ホラーの朗読劇バトル?に出ることになっているが、なんと当日朝になっても台本が出来上がっていない。苦肉の策として、いわくつきの台本で本番を迎える4人。

いわくつきの台本で演じている時に、途中から1人幽霊が紛れ込んでくるのだが、「え?今誰か喋った?」とか普通に言うので練習中なのかと思いきや、本番中設定だったので困惑した。本番中だったら、変に思ったとしてもまずは目配せとかからでは?と思うんだけど、まぁ一応朗読のていなのと、ここ確か地の文が消失してたので、仕方ないといえばないのか…。

台本上では4人が1人を崖から突き落としたみたいな流れで、「俺らの境遇と酷似している…!」みたいに一人が震えだし、それに対して「まぁ俺らの場合は突き落とすんじゃなくて舞台上で事故にみせかけてセットを倒しただけだけど…」みたいなセリフがあり、そこに「本番中にやめろよ!」というつっこみがくるのだが、(まじでそれww)みたいな気持ちに…。今が本番中だという意識ありますか??そりゃ売れないわ(マジレスすな)

事故に見せ掛けて殺した相手に同じやり方で殺される、というのは構造が綺麗で話の大枠自体は好きなんだけど、そういう細かいところでのひっかかりが気になってしまった。

あと客席を取り込みたいのかそうじゃないのかが中途半端だなと感じた。「お客さんだって危ないだろ!」みたいなセリフがあり、客電もついていたので、あ、ここでは私たちがそのバトルの観客設定だったのか、と気づいたのだが、気づいたらその世界に取り込まれていた感じも別になかったので、うーん、、となってしまった。

白づくめの男たちが4人それぞれについたのは死神みたいなこと…?と思ったけど、無駄にインパクトあるわりによくわからんので、あれは正直なくてもよかったんじゃないかな…と思ってしまう。深い意味があったらすみません。

ラストのセットがばーんと倒れてくる仕掛けも、おもしろいけどいまいちかっこよく決まりきらない感じだった。たぶんあれ、映像作品なら、ぐらぁっとセットが倒れてきたあたりでブラックアウトで終了なんだろうけど、演劇でやろうとすると難しいんだなと思う。倒れだしたあたりでどうなるかはわかるから暗転しちゃえばいいのでは?と思うんだけど、安全確保の問題でできないのかな。セットが倒れた後も明らかにまだそこに立ってますって感じになっちゃうからちょっと間抜けで惜しかった。

ただ、頭上をよぎるセットに肩をすくめ、倒れた瞬間にびくっとなってた推しが見られたのはよかったです(?)

カテコ

1人ずつ名乗ってコメントする時間がありました。

廣野くんのターン、最前のお客さんに「怖かったですか?」っていきなり聞き始めて笑った。うなづくお客さんに「ごめんね〜」と返し、今度は全体に「怖かったですよね、ごめんね〜」とかやっていて、隣の安元さんに自由だな…みたいなことを言われてた気がする(笑) 握った右手を心臓のあたりにあて、「(怖いの見て) 死後硬直みたいになってるかもしれないから、ほぐしとかないと」。

安元さんのターンで、セットが倒れてくるのが怖い、という話になり、「俺けっこう肩幅あるから、左肩持ってかれるんじゃないかと思って怖かった」。
ウケる廣野くん。
楓馬くんと大悟くんが「見てる方も怖かったよ」と話してました。

廣野くん、さらにはけぎわにも「お風呂場に気をつけて」と謎の一言を残しながらはけていったのもおもしろかった(笑) せっかくほぐした心をまた固めないでもらっていいですか?

廣野くんの演技への所感

まずはビジュアルについて語りたいんですけど、ハーフアップに丸メガネ、シャツは第二ボタンまであけて、腕まくりというスタイルだったのでちょっと色気がやばくてですね…。上でも書きましたけど、あまりにもどストライクすぎて「わああ」ってなってしまって、冒頭あんま頭に入ってこなかった(笑)

朗読の話に戻ると、ちょうど先週の個人イベントでセリフの立て方の話を聞いたところだったので、「あぁ~これが!」みたいになってなんかすごい気持ちよかった。邪魔にならない絶妙な抑揚が。

メガネかけて登場、「隣人」では外しており、「台本」では再度かけて登場。「隣人」では役作りかなと思ったけど、「台本」で再度かけていたのが微妙なところ。カテコもあるからそのためかな~という気もする。台本とかバミリとかは見えるけど、客席は見えないぐらいの視力な気がするんだよな。

違和感からだんだん膨れ上がっていく恐怖、よかったな~。速度も感情のボルテージも上がっていく中でも聞きやすいのはさすが。

「引き抜きの話、断るつもりだったんだよ」ってところでちょうど横顔だったんだけど、まさかの真実を聞いて固まった顔がとても美しかった。

舞台「ナミヤ雑貨店の奇蹟」感想

2/26 初日公演を見てきました。
※致命的なネタバレはしてないと思いますが、気になる方はご注意ください。

Story

敦也・翔太・幸平は、同じ養護施設で育った仲間。ある夜、ある家にコソ泥に入り、逃亡の途中で、廃屋になった雑貨店に逃げ込む。すると、表のシャッターの郵便口から、誰かが封筒を入れた。中の便箋には、悩み事の相談が書かれていた。この雑貨店の店主は、生きていた頃、近隣の住人の悩み事の相談に答えていたのだ。

3人はほんの遊び心から、返事を書いて、牛乳箱に入れる。すると、またシャッターの郵便口から封筒が。そこには、3人の返事に対する、さらなる質問が書かれていた。

しかも、差出人は、数十年前の時代の人間らしい……。

会場は池袋のサンシャイン劇場。1、2列目をつぶし、普段より少し広めになっている舞台。舞台中央には「ナミヤ雑貨店」。舞台外周にはりつくように、半円(上部は幕で切れている)があり、そこにはいくつか年号が書かれている。レトロな風合いとマッチした客入れの音楽が心地よかった。

オープニングのダンスが、ヒップホップの振りを入れつつも、何かスポーツの動きっぽいような、不思議な振りだった。けれど、3人のキャラ付けにマッチしている感じがして、とても良かった。

数十年前の出来事と今の出来事が入り乱れるような構成、しかも数十年前の出来事は複数人のエピソードが進行していくという、なかなか舞台化するには大変そうな話なのだが、よく整理されていて、いつの話なのか誰の話なのかわからなくなることはなく、ストレスなく見れた。

元々のナミヤ雑貨店の主人は悩み相談にまじめに返していたのを、戯れに返信し始めた3人はわりと言いたいことを言っているのに、それが結果的に助けになったりしているのが面白い。

出てくる人達はみんな普通の人たちで、やりたいことがうまくいったりいかなかったりしていて、すべてがキレイにハッピーエンドになるわけではないんだけど、その中で懸命に生きていることをあたたかくすくい上げるような話だった。

それぞれの思いがぶつかって衝突するようなシーンもいくつかあるのだが、相手への思いゆえのことだったり、そう言いたくなるだけの事情があったりで、あまり不快感はなく、ただただ思いに胸が熱くなった。

猪野くん演じる敦也が、相談者の身の上を自分の母親がどうなったかと重ね合わせて熱くなってしまうシーンがあるのだが、怒りのボルテージの上がり方が自然で、それだけについ反応してしまった感じが出ていて切なかった。


公演は3/6まで、池袋サンシャイン劇場にて。
napposunited.com

まわし!牛乳!ぼでぃくらっぷ! - 「結-MUSUBI-」感想

NON STYLE の石田さんが脚本・演出でのノンバーバル(言葉を使わない)演劇ということで、どうなるんだろう…とドキドキしていましたが、手品に殺陣にダンスにボディクラップに、単純にコメディ舞台ではなくてなんかいろいろ盛りだくさんで、初日は「いや情報量が多い!」となりました(笑)

劇場

(東京) 大和田さくらホール

初めての会場。今回3列目が最前だったんですが、ステージが低いのか、4列目の段階でわりと前の人の頭がかぶって見づらい。その分最前は非常に見やすかったです。

(大阪) COOL JAPAN PARK OSAKA TTホール

2.5でよく使われるWWホールのお隣。F列から段差あり。その前だとこちらもわりとかぶるので、最前かF列以降だな~という感じ。
あのあたりめちゃめちゃ久しぶりに行ったんですが、今っていろいろお店あるんですね。大阪城ホールやWWホールでも催し物やってたら席足りなさそうではありますが、カフェとかレストランとかいろいろあって隔世の感。ローソンに地味にイートインがあるのが助かる。

内容について

ノンバーバル演劇は以前「梅棒」さんの公演を見たことがあるんですが、そこはJ-POPの曲に乗せて主にダンスで魅せるタイプの公演で、話の筋は比較的シンプル、表情や仕草は通常の芝居よりオーバーめだったので、「結」もそういう感じの芝居かなと予想していました。実際はメインの話の筋はシンプルではありますが、話運びや表情・仕草は通常の芝居に近い感じだったので、また印象が違っていて、新鮮でした。思ったより細かいところまで伝わってくるんですよね。表情からこんなに情報を受け取れるんだなというのは驚きでした。

セットは固定で、場所は相撲部屋。真ん中にどんと土俵があり、奥には窓とドア、そこから出入りしたり、窓から外がみえたり。

そこにわらわらと四兄弟(長男:株元英彰、次男:廣野凌大、三男:杉江大志、四男:小野塚勇人)が登場するんですが、しょっぱなからまわし姿。稽古のオフショットからまわし姿があるのはわかっていたんですが、最初からそれで来るとは思わなかった…。ただ、結局ほとんどの時間まわし姿なので、最初こそどぎまぎしましたが、なんとも思わなくなってきたのは面白かったです。人間何事も慣れる。(ちなみに、まわしonlyではなく、下に肌色の二分丈ぐらいのアンダー履いてました。あと素足だと危ないからか、足袋っぽいのを履いてた)


ざっくりあらすじとしては、4兄弟が稽古に励んでいるところに妹が婚約者を連れてくる。婚約者の顔がブサイクだったことにより、「こいつでいいのか!?」と一悶着。しかしなんだかんだの末にハッピーエンドという話。

一応、話の筋はあるんですが、あんまり重要ではないんですよね。脚本書いたのが元々演劇畑の人ではないからか、コメディ演劇というよりは、コントが延々続いていくような印象。

ただ、さすがにお笑いの世界でずっとやってきた方だけあり、笑いの部分がちゃんと面白い。もちろん人によって刺さる刺さらないの違いはあるので、めちゃめちゃウケちゃうところもあれば、くすっと笑っちゃう程度のところもあるんですけど、スベったことによる笑い、失笑による笑いがないんですよね。程度はともかく、ちゃんとおかしさによって笑える感じ。


「結」へ向けてのインタビュー記事で、お笑いをやっている人はなんとなく感覚でわかっている笑いの仕組みを分析して言語化していくことで共有したいという話が出てきていたんですが、今作を見ていると、こういう状況でこれやると面白いっていう法則性が見えるような感覚があって、インタビューで言ってたのってこういうことなのかな~と思ったりしました。
saizenseki.com

ルールへのアンチテーゼ?

「結」の世界におけるルールとして、「喋ってはいけない」とは別に「女性を土俵にあげてはいけない」というのがあり、実際の世界でもそうなので*1、「まぁそうだよね」と思ってたんですが、なんとこのルール、ラストで女性を土俵にあげてもOKになります(笑)

うっかり妹が土俵を踏んでしまったことによって現れた存在をみんなで倒したことにより、OKになるんですが、この部屋で女性を土俵にあげてはいけなかったのは実害があったからで、その問題が解消されたら誰も気にしないというのが面白いなと思いました。絶対的なルールではなくて変えられるものとして提示されているように感じました。

見た目いじりはありやなしや

婚約者に対しての異議申し立ての理由が「顔がブサイクだから」というのは初日「えっ、まじで??」と思ったし、だいぶもやもやしました。ただ、この追い出そうとするくだりはめちゃめちゃおもしろかった。

何とかして婚約者を追い出そうと画策する5人(4兄弟+兄弟子)。順番に挨拶させていって、その動線でドアから退場させてみたり、トイレに追いやって閉じ込めてみたり。追い出しに成功すると「エンダァァァァァァァァァァァァァイヤァァァァァァァァ」が流れ、5人が喜びを表現する動きに(笑)

まだろくに話もしてないのに追い出される婚約者めちゃめちゃかわいそうなんですけど、ばんってドア閉まった瞬間に「エンダァァァァァァァァァァァァァイヤァァァァァァァァ」ってなるのめっちゃおもろいんですよね。あと導線で退場させるやつ、キャストが複数いるのをオタクが巡ってくタイプの接触じゃん…って思ってしまってウケた。

当然妹は怒るんですけど、諦めない兄たち。自分たちを含めて顔がいい順に並べるよう、妹にリクエスト。ここでもやはり婚約者が一番だとする妹に「目が悪いんじゃないか?」と言い出す三男。どこからともなく視力検査の表が出てきて(笑)、試してみたら案の定見えていない。メガネをかけて再チャレンジしてみるも、やはり婚約者が一番とする妹。

ここ、全体の見た目じゃなくてまじで顔の話だったのかって点ではきついんですけど、メガネかけて見てみたらブス…!じゃなくて、メガネかけてもやっぱり婚約者が一番だった点はよかったなと思います。

まぁここで終わってたら、「美的基準は人それぞれ」ってところでそこまで悪くない話運びかな~って感じなんですが、見た目いじり、もう一箇所あるんですよね。この後、婚約者がホームビデオを取り出してみんなを撮ろうって感じになるんですが、そこで、兄弟たちを撮る時は「キャー」っていう黄色い悲鳴があがるのに、婚約者を撮った時は「アーハッハッハ」という笑い声が流れるという…。ここはメガネの時と違って「でもやっぱ婚約者が一番!」みたいなオチがなかったのもあってちょっときつかった。


最近では減ってきているとはいえ、見た目をいじるのってお笑いでは定番なんですよね。でもこちらの感覚として、見た目いじりはダメでしょってなってきてるのできつい……。吉本新喜劇とかってどうしてるのかな〜と思って、TVerにあったので見てみました。

ハゲデブブスをいじる、見た目いじりそのものは健在。ただ、直接的な表現ではなく、ほのめかす表現になっている印象。私が子供の頃に見てた時の印象だと「こんなブッサイクな顔で」とか「ハゲのおっさん」とか「〇〇みたいな顔して(カエルが潰されたみたいなetc)」とか、直接的にdisるのが多かったように思うんですが、今回見たやつだと「お前はイキるなよ、お前はこっち側やろ」みたいな感じだったり、「ハゲ」を「わずか」として、言い換えてたり。

ただ、見ていて気付いたのが、吉本新喜劇の場合、見た目いじりはいじる側も微妙な容姿であることが多いんですよね。なので、「いやお前が言うなよw」というカウンターが(見てる側の脳内で)成立する(実際にそのツッコミが入る時もある)。これは元々そうだったのか、最近そうなったのかがわからないんですが、役の設定上、「かっこいい」「綺麗な」役として出てきてる人達は見た目いじりに参加しない。

けど、「結」では、見た目いじり、いじる側が俳優なんですよね。普通に顔のいい男がやってるので、このカウンターが成立しない。「あっ、そっすね」となるしかない。それですごくきつく感じてしまうのかな〜という気がします。

きつさを和らげようと思ったら、たぶんその後に俳優を落とすとかになるのかな。「いやお前もこういうあかんとこあるやろ!」みたいなのが来たらだいぶ印象変わりそう。

[2/27追記]
ちなみに大阪公演では、ヘアメイクさんのがんばりにより、婚約者の髪型やメイクがどんどんおもしろいことになっていき(笑)、結果、見た目いじりというよりは「変な髪型いじり」や「そのメイクなんなんだよ」といういじりになっていました。狙った変更なのかはわからないですが、よかったな~と思います。あとキャストもそこで初見だからけっこう笑っちゃっててかわいかった(笑)

ノンバーバルだと難しいこと

吉本新喜劇を見ていて、他にも気づいたことがあって、ノンバーバルだと、解説ツッコミが出来ないんですよね。「今やってたのがどういう意味を持つのか」を説明するツッコミが吉本新喜劇ではわりと出てくるんですが、ノンバーバルだとこれができないので、ボケの段階で客に伝わらないといけない。

あと、声が出せるとツッコミの勢いが出る。逆にいうと、声が出せないとツッコミの勢いが出しづらい。「結」を思い返すと、わりとはたいて止める展開が出てきてたんですが、喋らずに勢いだそうとすると、どうしてもそういう方向になるんだなと。

廣野くんについて

廣野くんの役は次男でナルシスト設定。ちょいちょいかっこつけしぐさとか、自分に酔ったような動作が入るんですが、非常にハマっていて違和感なかったです(笑)

牛乳一気飲み

婚約者との対決で牛乳一気飲みをやる展開になるんですが、他の人たちが1杯ずつのところ、廣野くん演じる次男はお調子者の四男のせいもあり、合計4杯飲む役回り。見た感じ、1杯が300mlぐらいあるんですよね…(笑)。1杯目の時は「飲むの早いな~あれもはや飲むというより流し込んでるんだろうな」って呑気に見てたんですが、4杯目、リアルにきつそうだったので、ちょっとハラハラしました(初日昼とかちょっとうぷってなってたし…)。ただ、4杯目飲む時の覚悟決める感じの表情には色気を感じてぐっときました。

殺陣&歌

妹が土俵を踏んでしまったことで現れた存在と4兄弟が日本刀で戦う展開になるんですが(文章で書くとなかなかカオスだ)、廣野くんの殺陣見てみたかったのでめちゃめちゃ嬉しかった~~! しかもそこに事前録音だけど廣野くんの歌唱が被さる!(笑) 殺陣来たー!って喜んでたら刀をマイクがわりに「みんな待たせてごめ~んね♪」って歌い始めたので爆笑しました。ナルシスト設定がそんな効き方してくるとは。初日は笑いすぎてまじで何も覚えてなかった(笑)

殺陣経験あまりないんだろうなというのがうかがえる感じではあったものの(ひとつひとつの動作をきちっとしてる感じからかな)、動きにめちゃめちゃキレがあって、間合いも正確だし、見てて全然不安感がなくて、バチバチでかっこよかった…! 殺陣いけると思ってた!嬉しい!と私はテンション爆上がりでした。

自分に酔って歌いながら殺陣してる設定なので、わりと動きが複雑だったんですが、きっちりこなしていたのがまたすごい。あんなにふらふら動き回りながら殺陣やることなかなかない気がする(笑)

ちょっとした発見とか
  • ナルシスト仕草って推しがやってたらわりと普通にかっこいいなって思ってしまう
  • ずっとまわし姿なのを見てると、まわし姿はなんとも思わなくなり、逆に着流し着てる時にちょっとはだけたり肩が出たりしちゃうのがえろく見えてくる不思議

*1:土俵上で倒れた人への心臓マッサージのために土俵にあがったのすら批判されたぐらいだし

マーダーミステリーシアター『裏切りの晩餐』 感想

※致命的なネタバレはしていないと思いますが、「こういう芝居してた」などは言及するので、気になる方はお気を付けください。

全6回のうち、私が見た回は下記3つ。
①12/14 15時
②12/15 14時
③12/15 19時

最初は廣野くん出演の③だけ見るつもりだったんですが、①は解説の北乃颯希くんが犯人当ててたっていうのを聞いて視聴、ここで全然雰囲気違うの面白い!となって、友人の推しさんが出ていたので②も見ました。

マーダーミステリーというのは最近ちらほら聞くなぁと思ってたんですが、パーティゲームとして古くからあるゲームらしいですね。プレイヤーが役を与えられ、その役を演じながら、殺人事件の犯人を推理していく、というゲーム。

人によって役の解釈が違ったり、議論での振る舞いが違ったりするので、設定としては毎回同じなんですが、回ごとに全然雰囲気が違って、とても面白かったです。

それぞれにどういう職業で誰とどういう関係かという設定が付与されていて、それが徐々に「手がかり」という形で明かされていくんですが、この作品、人間関係の設定がエグい(笑)。二股がわんさか出てくるんですよね。それがバラされる度に一悶着発生するんですが、言ってしまえばそこでドラマを展開することって謎解きには関係ないので、いかにして謎解きに戻るかというのも重要になってきます。


ドラマと謎解きとにどの程度時間をさいてたか、というのも回によって違っていて、上記3回の内、一番謎解きに時間を割いていたのは③、一番ドラマに時間を割いていたのは②、バランスよかったのは①だなと個人的には思います。

③は主に場を引っ張っていた廣野くんがかなり謎解きに対して意識が高くて、ドラマに流れそうになるのを謎解きに意識を戻す、っていうのをよくやっていたのがたぶん大きい。その分ドラマ要素は少なめです。

②はちゅうえいさんがかなり演じることに対して注力してて、「今はそこ(痴情のもつれ)は置いといて…」と謎解きに戻そうとするキャストに「置いといてってなんだ!これは重要なことだぞ!」みたいに怒ったりしてたので(もちろん演技で)、それがたぶん大きいんだと思います(笑) 謎解きもしてない訳ではないんですが、あんまり時間はさけてないと思う。友人がラブコメって評してたんですが、ドタバタラブコメが見たい人には②はオススメ。

①は上記2回と比べるとどちらが優先という感じもなくバランスいい回という印象。加藤諒くんがほんとにアドリブなのか疑問に思うぐらいこなれた感じの演技をしていたり、釈由美子さんのお芝居がめちゃめちゃ良かったりして、映像作品見てるような満足感がありました。


アーカイブが12/31まで見られるようなので、気になった方はぜひ☆
https://murdermysterytheater.jp/uragirinobansan/index.html

SPWNとシアターコンプレックスとで配信してるんですが、違いは下記。

  • SPWN
    • 各キャスト視点のverがある
      • ゲーム開始前に独白という形で、そのキャストの設定を聞くことが出来る。また合間に挟まる休憩タイムにはそのキャストの推理や次どう振舞おうかな…という戦略が聞けるので、そのキャストと一緒にゲームしているような視点で見られる。ただし、そのキャストが犯人役だった場合は最初から犯人を知った状態で見ることになる。
    • キャスト全員での感想戦がある
  • シアターコンプレックス
    • 解説がいる
      • 俳優さんとアナウンサーさん?のペアでの解説。休憩タイムにこの人が怪しいとかの推理が聞ける。
    • 1人か2人キャストを呼んでのアフタートークがある
      • 私が見た回(③)は解説の前山さん+廣野くん立花くんの3人でのトークで4分半。「あそこよかったよ」に対して「実はあそこは…」が聞けたりして短めなわりには中身ある感じだった。
  • どっちがいいの?
    • 出演者に推しがいる場合はSPWN版がオススメ。全体的に見たい場合はシアコン版で解説付きで見て、SPWN版で感想戦だけ買うのが楽しいかな〜と思います。


廣野くんについて
出演者のうち、立花くんは次の舞台の稽古で一緒ですが、他は初対面の方なので、おとなしい感じになるのかな〜と思ったら、わりと序盤から積極的に場を回して謎解きを進めようとしていて驚きました。

ドラマに流れそうになるのを謎解きに戻すシーンが何回かあったんですが、痴情のもつれで揉め始めた面々に対して、「夜の話はもういい…!」って言ってたのが、表現のぼかし方が好き(笑)。

役の設定としては女の子と遊びで関係持っちゃったりする、わりとクズな設定なんですが、どこか愛嬌があるというか、可愛げがある感じになっていました。同じ役の綱(啓永)くんや矢部さんがわりとクールな感じの役作りだったのとは対照的。

あと、とあるキャストを詰めるシーンがあるんですが、そこが完全にプロのやり方で… 穏やかなトーンから急にギア入るのが凄くて、初回視聴時はめちゃめちゃ怖かったんですが、とても最高なので廣野くんファンはぜひ見てほしい。アドリブとは思えないクオリティで、まじで絶品です。

舞台「池袋ウエストゲートパーク」感想

池袋ウエストゲートパーク the stage、通称IWGPが終演しました。*1
2週だと終わるの早いですね。

舞台「池袋ウエストゲートパーク」iwgp-stage.com


7/8からアーカイブ配信もあるので、気になってた方はぜひ!
配信チケット購入ページ https://eplus.jp/iwgp-st/
配信期間は 2021年7月8日(木) ~ 2021年7月14日(水)23:59 まで。


以下、感想部分ではネタバレしているので、これから配信見る方は注意!
……と思ったけど、致命的なネタバレをしていないので、あまり気にならない方だと読んじゃっても大丈夫かも。

劇場

豊洲PIT公演+シアター1010公演という、東京2箇所という変則的なスケジュール。みんな言ってたけど、作品の舞台が池袋なだけに、そのうち1箇所だけでも池袋でやってほしかったな…(笑) まぁ当然制作サイドも考えたとは思うので、難しかったんでしょう。

豊洲PIT

フラットと聞いて覚悟はしてたんですが、前の人の頭がかぶるかぶる。微妙に段差がある列もあったので(会場全体で2-3箇所)、その段差列に当たるとかぶらないのかな。2回見たんですが、絶対にどこかは前の人の頭がかぶっちゃって見えない、という感じでした。その位置で俳優がしゃがむともうまったく見えない。

あと音が反響してました。わぁん、と余韻が残る感じ。それがあるのでセリフをはっきりめ、ゆっくりめに言っていた、というのをシアター1010のアフトでキャストさんたちが仰ってて、たしかにそうなるよな、、と。その分、歌の部分は響いて楽しい!という感じ。やっぱりライブハウスだな~という感想でした。

あと劇場周辺にあまりお店がなくて、豊洲駅のあたりまで戻るのが一番早いのもネック。

シアター1010

こちらも2回観劇。めちゃくちゃ見やすくて、舞台上のどこにも人の頭がかぶらないのに感激しました(笑)。でもそれが普通…。やっぱり芝居は劇場で見るべきですね。

全体の感想

GボーイズNo2のヒロトがトップのキングへの対抗心をぶちあげ、Gボーイズの結束が危うくなる。このあたりで他にも細々と事件があり、Gボーイズとレッドエンジェルスのバランスが危うくなったところで、レッドエンジェルスのメンバーが殺害され、本格的に対立状況になってしまう。"トラブルシューター" マコトはなんとかおさめようと奔走するが…という話。原作のサンシャイン通り内戦(シビルウォー)の話をベースに2時間の舞台作品として再構成した話、という感じです。

原作の小説は中高生ぐらいの時に読んでいて、ドラマ版は未視聴。今回舞台化が発表された段階でアニメは見て、小説を数冊読み直した、という状態で観劇して、特段違和感感じなかったんですけど、舞台見てからあらためて小説読んで、驚いたのが、かなりいろいろとエピソードががいじられてるんですよね。舞台作品として、2時間ですっと理解できて、でも盛り上がりもちゃんとあるように再構成されている。にもかかわらず、IWGPらしいなと感じる。

私はこういう、「原作まんまだ!」って思っちゃうんだけど、原作読み直すとエピソードの要素が全然違う、みたいな作りの舞台作品がめちゃくちゃ好きなんですよね…。これやられると脚本書いた人すごい!って無条件に信頼してしまう。なぜかというと、これをやるためには、その話の芯をつかむ必要があるんですよ。「ここだけは外してはいけない」っていうポイントをつかんでいるからこそ、それ以外の部分では好きなだけエピソードを入れ替えたり要素を変えたりすることができる。逆にそれがつかめていない場合は何が外して大丈夫なのかわからないので、とりあえずストーリーをそれっぽくなぞるだけになったりします。(もちろん、ストーリー準拠の作品がすべてそうというわけではない)

わかりやすい違いだと舞台だとキングと京一がタイマンやっちゃうんだけど、小説版ではやってなかったりとか。小説読み返してたらタイマンをやってしまったら終わりだ…!みたいな雰囲気で描写されてて、めちゃめちゃ驚いた(笑) 舞台だとアクションある方が盛り上がるからタイマンしちゃう流れになったのかな~と思っています。

(アニメもちょっと見返してみたら、また違う話運びだった。この作品ではもしかして伝統的にそうなのかも??)

演出とか

演出の品川ヒロシさんは映像作品は経験があるものの、舞台作品は初、ということで、どうなるのかどきどきでしたが、普通によかったな…という感想。しばらく端っこだけ使っちゃうところもなくはないものの、2階部分も含めて、けっこう全体的に使っていて、初めてにしてはうまいな…と感心しました(どこ目線)。

演出で一番好きなのが、エピローグで登場人物たちのその後をマコトが紹介していくシーン。ふらふらと動き回るマコトが止まったところの近くにその人物(たち)が現れ、会話したりなんだりするのにマコトがコメントを挟んでいくんですが、映像作品的な、シーン切り替えつつ描写していくのと舞台作品としての映えが両立してる感じがおしゃれで好き。

あとこれは演出というより脚本かな? 京一がマコトにレッドエンジェルスの通行証になるアクセを渡すくだりが、必要最低限な描写になってたんですが、なんかカットの仕方がおしゃれで、表現はしつつも説明しすぎない感じで好きです。

キャラクターたち

マコト

猪野くんが心のゆらぎを表現するのがうまいのもあり、いろんな出来事に対して真正面から受け止めて葛藤しているような印象を受けました。そのために普通の青年感が際立ってた気がする。あんまり泰然としてないというか。説得シーンも諭すというよりはこの街を守りたいという一心で心をまるごと投げ出してきているようで、必死さにぐっと来ました。キングに「綺麗事ばかり言うな」と言われた後、シャドウにヒロトへのペナルティを依頼する時の、痛みを堪えるような、なんともいえない表情もとても良かった。

キング

しゅっとしててかっこよかった!アニメのキングがわりと冷然としてる感じなので、どうするのかなと思いましたが、基本はそこに寄せつつも、また少し人間らしさが乗った感じで、舞台版としてのキングという感じでよかったです。歌唱力があるので、歌い上げるところでカリスマ感が出ててよかった。マコトとのやりとりに中の人同士の仲の良さが反映されてる感じがして、ちょっとしたやりとりでほっこりしました。カテコでは安定の大輝くんで、役者ってすごいなと思いました(笑)

京一

欲を言えばダンスうまい人がよかったなと思わないでもないんですが(すみません)、京一のしなやかだけど芯がある、不思議な上品さが表現されていて、とてもよかった。終盤の「海だ」がすごく優しい声音で、最初泣きそうになりました。

磯貝

磯貝、、あんなに見た目かわいいのにね…(そこから)。この人もかわいそうな人ではある。調子いいんだけど、どこか底が見えない感じが再現されていて、めちゃめちゃ磯貝だった。


まだまだ原作のエピソードもあることだし、次、ぜひ池袋のどこかの劇場でやってもらいたいな~。

*1:正確には舞台の略称ではない

現実とフィクションのあわい - 「要、不急、無意味(フィクション)」感想

劇団た組さんのインターネット公演「要、不急、無意味(フィクション)」の4/19(日) 13時公演を見た。

Skypeを利用したリアルタイム上演(?配信?)と聞いて、どういう感じなのかなという好奇心から観劇(?)した。作り手の意図とはズレたところでおもしろがっている気がしてならないが、めちゃめちゃおもしろかった、という話。

話の内容については、詳細に書いてくださってる方がいらしたので、そちらを見ていただいた方がいいかと思う。
maguromgmg.hatenablog.com




今回の公演はSkypeのグループ通話を利用した方法だったため、メールで送られてきたリンクで「通話に参加」するところから始まった。Skypeアプリの真っ暗な画面の上方に静かに参加者のアイコン(大半は画像設定なしでアルファベット数文字が表示されているだけ)が粛々と増えていくのは不思議な光景だった。マイクとビデオをオフにした参加者が静かに増えていく。

上演5分前に開演前の諸注意。飲食禁止や私語禁止のアナウンスがないかわりに、マイクとビデオはオフにしておいてくださいという内容。録画や録音禁止のアナウンスも。Skypeスクリーンショットを撮るとチャットと連携していてバレるというのは初めて知った。

Skypeを使うのが久しぶりだったので、ちゃんと見れるのかが若干心配だったのだが、上演開始前にテストとして、いったん俳優さんたちの映像を映す時間があって安心した。4分割の画面に映し出される俳優さんたちのお顔。

スマホ版のSkypeでは、俳優さんたちのアイコンを自分で画面中央に持ってこないと映像が映らないらしいのだが、そのアイコンが見当たらないというコメントがチャットに書き込まれ、「マイクに反応するので、喋ってもらえますか?」ということに。「○○です」と各々名乗る俳優陣。

私はここで初めて、彼らも「今まさに」画面の向こう側にいることを実感したように思う。リアルタイム配信であることは「知って」はいても、それまではなんだかんだで映像として見ていた気がする。

余談だが、「健介さんだけ見えないです…」というコメントが書き込まれ「健介、見えないってよww」と俳優さんたちが笑うという一幕があり、くつろいだ、素っぽい様子を見ていると、本当にSkype通話の覗き見をしているようで、妙な親密さを感じてどきどきした。

不具合報告のチャットが落ち着いたところで、いったん俳優さんたちのビデオをオフ。そこからあらためて上演開始となった。

お芝居の内容は、Skype通話で友人4人がぐだぐだとしゃべっているところを見る、というもの。現状と同じようにコロナウイルスのために外出が自粛されているために彼らはオンライン飲み会をしようということになったらしい。繰り出される不満や愚痴はまさに私達が喋り、見聞きしている内容そっくり。

ただここでちょっと惜しかったなと思うのが(というと上からになってしまうが)、救済策として30万出るけど、あれだいたいの人もらえないよね、という話をしていて、あ、「今」ではないなというのがわかってしまったこと。まぁでもいつ政策が変わるかなんてわからない以上、そこまで厳密に取り込めというのがそもそも無茶ではある。


開始から5分くらいたった時だろうか。途中から参加した人が操作がわからなかったらしく、マイクとビデオをONにした状態で参加してしまった。しかも間の悪いことに、その段階では4人の内の一人がまだSkype通話に参加していないという設定で、画面が4分の3しか埋まっていなかったので、空いたスペースに突然の闖入者が映し出されることになってしまった。

いや邪魔だな~早くビデオをオフにしてくれ…と思いながら3人の芝居を聞いていたら、「なんか映ってない?」「え?ほんとだ。なんだろ?」と俳優たちが触れ始めたのは驚いた。しかし、彼らがこのSkype画面を見ながら喋っているのだと考えれば、突然の謎の映像に触れない方が不自然である。そのあたりでようやく闖入者の映像がオフになり、3人は元々の話題に戻った。

これはまさしくハプニングであり、明らかに公演としては予期してはいないことだが、この時にあらためて「今まさに彼らも画面の向こうにいること」を強く感じて、私はまた映像として見ていたんだなと思った。

詳細は省くが、会話の流れからAVの音声を聞く流れになり、しかもそのAVを止められなくなったために、喘ぎ声をBGMに会話を聞く状態になる。「シュールだな~」と思いながら聞いているうちに、もう切ろうという流れになり、4人がそれぞれ切っていく。(余談:確かこの時に、最後に一人が名残惜しそうにしばらくつながった状態になっていたのがなんだか印象的だった)

唐突な幕切れだったなぁ…と思いながら、真っ暗な画面を眺めること数秒。

「一年後」という文字と音声。

えっ、嘘でしょ!?

リアルタイム配信であること、「今この時」を共有していることに意味がある公演だとここまでの流れで勝手に思っていた私はかなり驚いた*1。先程までは、私と彼らとで「今この時」を共有していた。同じ時を生きていた。しかし、彼らは一年後の時空に進んでしまった。先程から地続きで存在する私と、映像の中の一年後の彼らがうまく処理できなくて、脳が戸惑ったのを覚えている。


私はそこからあらためて、「フィクションの作品」として見始めた。画面の中の彼らは「一年後の彼ら」。その認識を脳になんとか浸透させた。この時の現実から切り離されるような感覚は味わったことがないものだった。

この後さらにもう一度、一年時間が進んで最初のシーンから二年後にも飛ぶのだが、個人的には一年後は悲観的すぎる予測だし、そこを基準に考えるなら二年後は楽観的すぎるなという印象だった。

そのあたりの、私の想定する未来像からの遠さが原因なのか、一年後に飛んだ時の現実感からの切り離しの印象が強すぎたのかはわからないが、一年後二年後の部分に関して、あまり今の延長線上にありうる未来だという感じが私はしなかった。あくまでフィクション、ファンタジーという感じ。


最後の幕切れもぬるっとした終わり方だった。
真っ暗な画面に表示され、読み上げられる、
「この物語は、フィクションでした」

そう、フィクションなんだよなぁ。リアルタイムでSkype通話でつながって彼らの姿を見ていたけれど、これはあくまで「フィクション」なのだ。


この公演は、何をもって私はリアルタイムだと感じ、現実だと感じるのか、その境界が揺さぶられるような体験だった。

双方向なやりとりが発生した瞬間の「彼らも今まさに向こうにいるんだ」という気づきと、彼らが一年後にスキップした時の「置いていかれた」感じ。いずれも新鮮な感触で、とてもおもしろかった。

*1:しかし、そもそも暗転=場面転換なので、そこで気づけよという話ではある

浪漫活劇譚 艶漢 第四夜 感想

今回最後の週しか取っていなくて、自粛要請が出てばたばた公演中止が出ていたので、どうなるかはらはらしたんですが、やってくれてよかった…。ありがとうクリエ。ちなみに観劇時はマスク着用推奨で、マスクしてないお客さんには声をかけて着用をお願いする徹底ぶりでした。


水劇の話は舞台化難しいだろうなと思っていたので、水劇のくだりをやるらしいと聞いて「まじか」となったんですが、照明、音響、そして役者さんの動きにより、ちゃんと水劇でした。弁士っぽい感じで芝居の説明してるの見て、そうか演者は水の中だから喋れないんだ!とあらためて実感したり。

お互いにないものねだりしていたことがわかる、というわかってみれば卑小なんだけど、その人間の小ささがいじらしく思える感じがして、このエピソードはなんとなくほっこりします。どろどろではあるけども。

その分、漁火のゲスさがきわだつ感じで、これまで尚哉くんの悪役見たことなかったんですが、いい感じにセコい悪役って感じでよかった。

詩郎は公演を経るごとに色気が増してる感じで、今回もよかった…。しかも光路郎に対しての信頼が育ってきている分、甘えが出てきていてそれがめちゃくちゃかわいい。「あてしだって!」って張り合うところとか、その甘えを感じて悶えました。あとラストあたりかな、「大馬鹿」って言うところで、光路郎と抱き合ってて光路郎には見えないからなのか、めちゃめちゃ嬉しそうな顔してるのがさ~~~!ずるい、その表情はずるい。

あと安里は今回も安里でした(感想)。登場しただけでぱぁっと雰囲気が華やかになり、目が惹きつけられる感じはすごいな~と毎度新鮮に驚きます。